Friday, July 29, 2022

アマゾンの大型ヘルスケア企業買収に見えた「現代のコングロマリット」という成長戦略 - ビジネス+IT

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すでに遠隔医療サービスやオンライン薬局を展開していたアマゾンの次なる一手

(Photo/Getty Images)


アマゾンが投資を強化するヘルスケア事業

 アマゾンはOne Medicalの買収によって、同社がこの数年注力してきたヘルスケア分野のビジネス領域を強化・拡大することになる。

 現在、米国において、アマゾンのヘルスケア分野における主要ビジネスは、遠隔医療サービス「Amazon Care」とオンライン薬局「Amazon Pharmacy」といえるだろう。

 Amazon Careは、2019年にアマゾン社員を対象に試験運用が開始され、2021年3月に本格ローンチされた遠隔医療サービス。24時間365日、Amazon Careスマホアプリを通じて医師や看護師による遠隔医療サービスを受けることができる。遠隔だけでなく、医療訪問による採血、心肺機能の検査、処方薬の配達なども追加で可能となっている。

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アマゾンはこれまで「Amazon Care」と「Amazon Pharmacy」を手掛けてきた

(Photo/Getty Images)

Amazon Pharmacyで競合の株価は大暴落

 一方、Amazon Pharmacyは2020年11月にローンチされたオンラインで処方薬を注文できるサービス。アマゾンプライム会員であれば、デリバリー代が無料となる。

 CNBCによると、このオンライン薬局サービス事業は、2017年の社内ディスカッションから始まり、2018年のPillPackの買収などを通じて数年かけて構築されてきたという。

 PillPackは、2013年にTJパーカー氏とエリオット・コーヘン氏が立ち上げた薬のオンラインデリバリーを提供する企業。アマゾンは2018年6月に、そのPillPackを7億5,300万ドルで買収。PillPackのインフラを活用しつつ、2019年11月に「PillPack by Amazon Pharmacy」というサービス名で薬のデリバリーサービスを開始した。2020年11月には、Amazon Pharmacyのローンチに伴い、PillPackは慢性疾患向けの薬のデリバリーに特化した独自事業として存続することが明らかにされた。

 IQVIAのデータによると、米国の処方薬支出は年間5,000億ドルに迫る規模で、現在も7%で成長する巨大市場。米国成人のうち心臓病、がん、糖尿病など少なくとも1つの慢性疾患を患っている割合は60%、2つ以上は40%といわれている。

 米国の処方薬市場はアマゾンが参入するまで、CVSやWalgreensといった大手薬局チェーンが幅を利かせた市場となっており、デジタル活用が遅れており、イノベーションが起こりにくい体質だったといわれていた。アマゾンが参入することによって、ディスラプションが起こることが期待されていた。

 実際CNBCによると、Amazon Pharmacyがローンチされた日の株式市場では、CVSの株価が8.6%下落したほか、Walgreens株が9.6%下落、Rite Aid株が16.2%下落、GoodRx株が22.5%下落するなど、処方薬市場プレーヤーの株価は軒並み下落する事態となった。一方、同日のアマゾン株は、前日より若干高い価格で取引されていたという。

【次ページ】フェルドマン教授「現代のコングロマリットを形成」

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