ロシアによるウクライナ侵攻などが思わぬ方面に影を落としている。産出国が限られるヘリウムガスが不足し、風船に注入するガスが市場に出回りにくくなっているのだ。新型コロナウイルス禍による米国の海上輸送の混乱も重なり、風船を多用する結婚式などではヘリウムガスを使わない演出を工夫する動きも出てきている。(小森有喜)
「片っ端からお願いしたが…」
「日本でヘリウムガスを扱っている業者を調べ尽くして片っ端からお願いしましたが、この量が精いっぱい」。兵庫県三田市八景町の風船専門店「ハニー・バルーン」のオーナー高木弘平さん(30)が話す。以前は1カ月で平均7立方メートルほどのガスを使っていたが、今は半分を確保するのがやっとという。
結婚式などで多くの風船が必要な場合、顧客の要望に応えられないケースも出てきた。例えば新郎新婦が高砂席の両側に風船を浮かべたい時。普通の空気を入れた風船を積み重ねて高さを出すなど、ガスを使わず、見た目の華やかさをいかに演出するか工夫を重ねている。
ガス不足を強く実感し始めたのは今年の初め。今では仕入れ額が以前の倍ほどになった。やむを得ず商品価格を2割増しにしたが、「正直、赤字だけどお客さんのためにやるというケースも出てきている」。
「お勧めできなくて…」
結婚式場として人気が高いホテルオークラ神戸(神戸市中央区)は、今年に入ってからバルーンを確保しにくくなったとする。「以前と違い、こちらから新郎新婦にバルーンを使った演出を勧めることができない」と担当者。神戸市など全国32カ所で結婚式場を運営するエスクリ(東京都)も、参列者が一斉にバルーンを空に放つ演出が困難になっていると明かす。それでもなるべく新郎新婦の意向に沿えるよう、例えば「サプライズ感」を重視するカップルには代わりに花火の打ち上げなどを提案している。
▼▼ヘリウムガス、限られる産出国
ヘリウム輸入大手の大陽日酸(東京都)によると、天然ガスの採取時に副産物として得られるヘリウムの産出国は米国、カタールなど数カ国に限られ、日本は全量を輸入に頼っている。
近年は中国を中心に需要が伸びたことから輸入価格は年々上昇傾向にあり、今年1~3月の平均輸入価格は1キロあたり9303円(貿易統計)で10年前の3倍を超えた。
日本産業・医療ガス協会(東京都)によると、昨年夏ごろから米国でのコンテナ輸送の混乱が続いたことで物流が滞り、供給量が著しく低下。新たな産出国として期待されていたロシアの天然ガスプラントで火災が発生したことに加え、ウクライナ侵攻で調達が決定的に難しくなった。
大陽日酸の担当者は「これまでも生産元でトラブルがあって供給が滞ることはあったが、ここまでの状況は初めて」。同社は今年4月から、取引先への出荷量を一律50%に制限する異例の判断に踏み切った。制限解除の見通しは立っていないという。
ヘリウムには医療現場でのMRIの冷却、半導体製造や水道水の水質検査といった用途がある。同協会の担当者は「さまざまな場面で活用されており、需要過多の状況はしばらく続くだろう」と話した。
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