マルクスとケインズは資本主義の構造をどのように見ていたのだろうか(luigipetro/PIXTA)
「ゼロ金利」を予言したケインズ
水野:次の100年と言いますか、次の時代の指針という意味で、ケインズの提言は面白いですね。ケインズは90年も前に、現代風に意訳すれば「ゼロ金利になれば、財産としての貨幣愛は追求する必要はない。だからミリオネアはもういらない」と言っています。ゼロ金利を達成した社会は、必要なものを必要なところに供給できる体制になっていると。
それでもケインズは、やはり人間の本性というのは、人類誕生以来、働け、働けと習慣化されているので、急には実現できないが、週15時間働けば大丈夫と試算しているんですね。ゼロ金利になって、新規の投資を行わなくてもよくなれば、週15時間労働で十分必要なものが提供できる。あとは自由時間を満喫できると言っています。
ケインズの慧眼は、1930年の論文で、100年後の2030年にはゼロ金利になると予想しているんですよ。
木村:そうですか。100年も前にね。そうすると、2000年代の前半にゼロ金利になった日本はかなり先取りしているわけですね。
水野:日本とドイツとフランスが先取りして、ゼロ金利になりました。しかし、今の日本は、依然として働け、働けですよね。
木村:自由になった時間を満喫して高度な文化活動に使おうなんて、まったくないですね。むしろ、ゼロ金利になって、グローバリゼーションの進展とともに中間層が滑り落ちてしまった。それでも個人の金融資産は増え続けているし、企業の内部留保も積みあがっている。暮らしが豊かになった実感は多くの人たちは持てないでしょう。1日24時間が50時間くらいになれば、ケインズの予言が実現するのかもしれませんけれども。
水野:そのケインズは「ゼロ金利になっても、貨幣愛が強い人は、お医者さんに行ってください」と言っています。貨幣に執着する人は半ば犯罪者で、半ば病人だと。
だから、ケインズは、刑務所に入ってもらうか、病院に長期入院してもらって、社会的隔離、物理的に隔離しなさいと。いやケインズも過激だなと思いましたね。
木村:かなり過激ですね。でも、ケインズが言っていることは理解できます。同じようなことを古代中国の荘子は「恥無き者が富む」と言っています。水野さんの別のご本でも触れられていましたが、『貧困の哲学』を書いたフランスの無政府主義者ピエール・プルードンは「所有とは盗みである」と看破していますね。
水野:同じですね。つまり、過度な貨幣への執着は悪だと。
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