サントリーが4月に発売した新商品の「サントリー生ビール」。アサヒビールやキリンビールの後塵を拝するビール市場での浮上を目指す(記者撮影)
4月4日、サントリーは新商品の「サントリー生ビール」を発売した。ビールの中でも最激戦区の「スタンダードビール」の領域に投入し、現状は存在感の薄いビール市場で反撃に出る。新商品は、麦芽やコーンのうまみ・特長を引き出す製法により、飲みごたえと飲みやすさを両立させたという。
「10年以内にサントリーを国内酒類トップにしたい」
東洋経済の単独インタビューに対し、そう意気込みを語ったのは鳥井信宏社長だ。同社はウイスキーなどでは他社の追随を許さないが、国内の総合酒類市場のシェアでは、大手4社の中で三番手に甘んじる。その最大の理由は、国内酒類の最大市場であるビールで弱いことにある。
2008年、「ザ・プレミアム・モルツ」のヒットによって、サントリーのビール事業は参入から45年にしてようやく黒字化を達成した。だが、国内首位のアサヒビールの背中は遥か彼方にある。2022年にアサヒビールがスーパードライのみで6888万ケースを販売したのに対して、サントリーのビール類は全てのブランドを合計しても5490万ケースにとどまる。
酒税改正でテコ入れ必至のビール
サントリーの鳥井信宏社長は、新開発のビールに「国内酒類トップ」の夢を託す。創業家出身の鳥井氏は、サントリーホールディングスの次期社長の有力候補と見られている(撮影:尾形文繁)
鳥井社長は「(酒類トップを目指す上で)ビールを無視できない」と話す。重要課題であるビール事業強化に向け、新商品には期待も大きい。「大手3社の風穴を開けるためには知恵を使わないといけない。年始からの営業会議でも発破をかけている」(鳥井社長)。
新商品の販売目標は初年度に300万ケースとやや控えめだが、大ヒットの位置づけとされる1000万ケースを早期に目指す方針だ。サッポロビールの看板商品「黒ラベル」は2022年に1399万ケースを販売しており、その目標の高さがうかがえる。
新商品投入には、サントリー固有の事情もある。段階的にビールを減税し、発泡酒や「新ジャンル」と呼ばれる第3のビールを増税する「酒税改正」が逆風となるからだ。
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