Vol.8 P.M.4:43 閉会
フラワーガール・高山日向子(6歳・小学1年生)
壮大な大階段を横目に披露宴会場となったホテルを出ると、すでに陽は傾きかけ、晴れた空が薄橙色に色づきはじめていた。
車寄せにズラリと並ぶ運転手付きのハイヤーやタクシーが、たった今閉会したばかりの披露宴の規模を物語っている。
日向子はその小さな鼻の穴を興奮で膨らませながら、お見送りのプチギフトとしてもらったばかりの緑樹庵清水の金平糖を口に放り込む。
そして、ふんわりとした真っ白いスカートをタクシーの後部座席に押し込むと得意げな表情を浮かべて、隣に座る母親・千紗子をせっついた。
「それちょうだい!もう、わたしが自分で持つ」
日向子が催促したのは、大きな白いブーケだ。
今日いちにち花嫁のマサミの手元を飾り続けた、美しい白いブーケ。
「今日は本当にありがとう。ひなちゃんのおかげで、最高の1日になったよ。
これ…感謝のプレゼントです。もらってくれるかな?」
そう言ってマサミから手渡されたブーケは日向子にとって、まるで金メダルのように誇らしい勲章なのだった。
日向子が頬を桃色に上気させながらうっとりとブーケを見つめていると、タクシーの助手席に乗った父親が、今にもとろけそうな笑顔で振り向き言った。
「ひなちゃん、白いドレスにブーケなんて、まるで花嫁さんみたいだねぇ」
その言葉に、日向子はまたしても鼻息を荒くして答える。
「うん。わたしも大きくなったら、絶対お嫁さんになるんだ!マサミちゃんとか、ほの香先生みたいに」
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