経済政策、憲法改正、Z世代の困窮etc. 日本人が抱えている大問題の解決策を、歴史から紐解いていく「呉座式・日本史フルネス」。 著書『応仁の乱―戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)が48万部の大ベストセラーとなった歴史学者・呉座勇一氏が、現代と過去を結びつける“未来志向の日本史”を丁寧に解説する。 今の日本の突破口とは? 気鋭の学者が読み解く重厚な歴史の流れから、最善策を見出していく。
江戸後期の経済トレンドは米価安・諸色高というものである。諸色とは、米以外の日常品の価格を指す。周知のように、江戸時代の経済は米本位制。米価が下がり、それ以外の物価が上がることは、年貢米でやりくりをしていた幕府や諸藩の財政難につながり、米で給与をもらっていた武士たちの生活も困窮してしまう。 そうしたなか、行われたのが江戸幕府の三大改革(享保の改革・寛政の改革・天保の改革)だ。「米将軍」と呼ばれ、米価の安定に尽力した徳川吉宗はよく知られた人物だが、今回、注目するのは1841年に天保の改革を主導した水野忠邦。徹底した倹約令を発令し、インフレを抑止しようとした江戸後期の政治家である。 当時の幕府は、商人が活発に消費することで経済が活性化され、物価が上がっていることを問題視。そのため、贅沢を取り締まり、意図的に経済を冷え込ませることで物価を下げようと考えた。 これはバブル経済末期、物価上昇とバブル成金への不満から金融引き締め策を行い、インフレ退治を進めた当時の三重野康日銀総裁(「平成の鬼平」と喝采を浴びるも、現在はバブル崩壊の張本人と批判されることも多い)と同じ考えとも言えるだろう。
江戸幕府が行った物価高対策の失敗とは?
歴史から現代の問題解決のヒントを学ぶ「日本史フルネス」。今回は、我々の生活に直結する「インフレ」について述べていきたい。 現在、ウクライナ戦争が原因で原油高が進み、急激な円安が進んでいる。円安は輸入品の値上がりにつながる。インフレがこれ以上進行すれば、国民生活にさらなる悪影響を及ぼすだろう。現状、日本政府は特段の円安対策に乗り出していないが、今後、かつてのオイルショック時のようなインフレ対策を迫られるかもしれない。 実はこれと似たような状況は、江戸時代後期にも存在する。インフレ時に強行された倹約令
【お詫びと訂正】
週刊SPA!8月30日9月6日合併号の「日本史フルネス」において、「寛政の改革(1987)」という表記がございましたが、正しくは「寛政の改革(1787)」です。大変失礼致しました。
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