「週刊現代の記者、編集長、私を(社会的に)殺す気ですか?」――。元自衛官で、自衛隊でのセクハラ被害を告発している五ノ井里奈さん(@judo_gonoi)が、意に反して記事が掲載されたとして、講談社の『週刊現代』をSNS上で批判しました。ねとらぼ編集部では五ノ井さんに背景を聞きました。
五ノ井さんの投稿をきっかけに、『週刊現代』編集部の対応が「これは酷いです。週刊現代に抗議します!」「ありえないだろ。それが週刊現代のやり方か?」など物議を醸しています。なお、五ノ井さんの批判を受け、Webメディア「現代ビジネス」に掲載された該当記事はすでに削除されています。
掲載された記事は「『性被害』告発した元女子自衛官・五ノ井里奈さんが、香川照之の騒動に感じた『強烈な違和感』」と題したもの。導入として、俳優の香川照之さんによる一般女性へのわいせつ行為について、五ノ井さんの意見を引き出した後、五ノ井さんが受けた性被害について記したものです。
五ノ井さんによると、『週刊現代』編集部から「香川照之さんの件についてどう思うか。性加害を受けることがいかに心身にダメージを与えるのか」などのテーマで取材をしたいというメールが来たことが発端だったといいます。五ノ井さんはそのメールを無視していたものの、担当のフリージャーナリストから突然電話がかかってきました。なお、過去に『週刊現代 2022年7月16日号』に五ノ井さんのインタビューが掲載されており、電話番号はその際に提供したものとみられています。
五ノ井さんは担当者が「取材はコメントのみ」と説明していたことを受け、そのまま電話で取材を受けることを了承しました。取材では、「私はその場にいなかったので、飲み屋の世界も知らないし、事件についても詳しく知らないし、何とも言えませんが……」と前置きしたうえで、香川さんの件について考えを述べました。
ところが、原稿の内容についてやり取りを続けるうちに、五ノ井さんと担当者との話がかみ合わなくなっていきます。五ノ井さんは、香川さんの件と自身が受けた性被害が無関係であることに加え、自身の性被害についての記述も事実と異なる部分があったため、「私の被害(について)は書かないでもらいたいです」と要求しました。また、香川さんの件について言及した文章は3段落あり、そのうちの1段落について、「確かな情報ではないので消してください」とお願いしています。
一方で、担当者は「記事(が)全くもって違うとは、どういう意味でしょうか?」「被害の内容の記述が間違っているということですか?」など、五ノ井さんの意図を飲み込めない様子です。とはいうものの、最終的には「この記事を取り下げるかどうか編集と相談します」「編集と相談してまた明日ご連絡します。五ノ井さんの被害についての記述を削るように提案してみます」など、記事の取り下げや記述の削除について編集者と相談するとしていました。
その後、五ノ井さんは香川さんとその被害者が示談しているという報道を目にしたことなどを踏まえ、今回のコメント自体を差し控え、代わりにほかの性被害に遭った被害者と引き合わせることを提案しました。このような経緯があったにも関わらず、担当者から代替案について返信はなく、記事が何1つ修正されずにそのまま掲載されてしまったのです。
五ノ井さんが問い合わせると、担当者は「五ノ井さんの意向は編集部に伝えていたのですが、配信時間が決まっていたので出てしまったようです」などと弁明。また、電話で2度も記事を削除するように要求しても、担当者は「編集者には伝えている」「はいはい」などと応答しただけで、電話を一方的に切ってしまいました。なお、これら文面でのやり取りや電話の音声については、五ノ井さんの提供のもとねとらぼ編集部でも確認しています。
五ノ井さん「本当に許せない」
五ノ井さんは8月31日、自身の性被害について、防衛省に第三者委員会による公正な調査を求めるオンライン署名を提出。9月6日には浜田靖一防衛相が全自衛隊員を対象にハラスメントに関する特別防衛監察を実施するよう指示したことを明らかにするなど、自身の被害の告発に留まらず、自衛隊でのハラスメント廃絶へ向けて取り組みを進めています。
五ノ井さんはねとらぼ編集部の取材に対し、「私はこの(自衛隊での性被害という)問題に人生をかけています。これまでひとつひとつ信頼を少しずつ積み上げてきました。今、本当に大事なときなので矛盾が生じると、今まで積み重ねてきたものが全部崩れてしまいます。こんな対応をされて、本当に許せないです」と、現在の思いを語りました。
また、『週刊現代』による取材については「取材後にきちんと考え直して、最後には『私の被害と香川さんの問題は別物だから、載せないで下さい』と言っています。絶対に配信を止められたのに、配信を止めなかった『週刊現代』編集部は悪質です」と批判しています。
ねとらぼ編集部では、『週刊現代』編集部になぜ該当記事をそのまま掲載したのか、今後の対応はどうするのかについて問い合わせましたが、「今、五ノ井さんとやり取りを進めているところなので、お答えは差し控えさせていただきます」とのことでした。
協力:五ノ井里奈さん
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