Wednesday, September 21, 2022

まだ恋をしている? 現代のオートクチュールがもつ意味とは:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

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甲南女子大教授・米澤泉

 森英恵さんが亡くなった。森英恵さんの偉大さは言うまでもないが、その功績のなかでも特筆すべきなのが、日本人として初めてパリ・オートクチュール協会の正会員になったということだ。オートクチュール協会の正会員として認められるには、高い創造性と技術力が必要であり、パリにアトリエを構えていることなどの厳しい基準がある。よって、パリにアトリエがないアルマーニもヴァレンティノも正会員ではなく、準会員である。

 19世紀末、オートクチュールの父と称されるウォルトは、メゾンでモデルに新作の服を着せて顧客に見せるファッションショーを初めて行った。また、服に自らの名のタグを縫い付けることにより、「ブランド」という記号的価値を生み出し、デザイナーという職業の社会的地位を高めた。まさに、現代のファッションシステムの礎を作り上げたのだ。

 しかしそれから1世紀以上の時が経ち、このファッションシステムは綻(ほころ)び始めている。さまざまな歴史と物語を背負ったブランドたちが、巨大なコングロマリットの傘下で、個性を失いつつある。環境への負荷がますます懸念されるなかで、季節ごとに必ず新しい流行を生み出さなければならないこと自体が問われている。

 そのような時代に、膨大な手…

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