Monday, June 6, 2022

現代人が共感する理由を監督が明かす『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』 | cinemacafe.net - シネマカフェ

「飛ぶ教室」「ふたりのロッテ」などで知られる児童文学の大家エーリヒ・ケストナーによる長編小説を、ドイツの名匠ドミニク・グラフ監督が、同国映画界のトップスタートム・シリングを主演に迎えて映画化した『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』。90年前のケストナーの原作に現代人が共感するのはなぜなのか、監督のインタビューと瑞々しい本編映像が到着した。


>>『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』あらすじ&キャストはこちらから

ベルリン国際映画祭で絶賛され、ドイツ映画賞で最多10部門ノミネート主要3部門を受賞した本作の舞台は、ナチズムの足音迫る1931年のベルリン。

本作が日本初公開となるドミニク・グラフは、ファビアン(トム・シリング)コルネリア(ザスキア・ローゼンダール)のラブストーリーについて、“現代”と1930年代ドイツとのつながりについて、そしてスーパー8などを使用した刺激的な映像表現についてなどを語っている。


本作はラブストーリーで、叙事的な観察記録

Q:この映画は、現代の地下鉄の駅から、1930年代初頭のワイマール共和国へと観客を連れて行く移動ショットから始まるが、なぜこのようなオープニングにしたのか?

ドミニク・グラフ(以下、DG):現代とのつながりを作りたかったのです。僕はこの映画をドキュメンタリー風に始めたら素晴らしいだろうと考えました。僕たちはカメラを構えてトンネルを通り抜け、過去の時代に至ります。そこには光が降りそそいでいますが、同時にドイツの最も暗い時代ーーこれからどこまで暗くなっていくのかさえ分からないような時代でもあるのです。

Q:ケストナーの原作「ファビアン あるモラリストの物語」をどのように脚本にしていったのか?

DG:僕がこの小説を初めて読んだのは、1979年の西ドイツでのことでした。魅力的な、素晴らしい文学だと思いました。何にもましてラブストーリーであり、対話であり、叙事的な観察記録であり…。僕は、“これはファビアンとコルネリアのラブストーリーにできる”と直感しました。

Q:トム・シリングを本作の主役に据えようと思った理由は?

DG:トム・シリングがこの役を演じたくないと言ったなら、僕はこの映画を撮らなかったでしょう。僕にとって彼は、この複雑な主人公を演じる上で理想的な俳優でした。

Q:この映画は部分的にスーパー8で撮影されているが、デジタルの割合は?

DG:80%くらいはデジタルで撮られていて、スーパー8の映像やベルリンを映したモノクロのアーカイブ映像を組み込みながら編集しました。とても音楽的な作業でした。

Q:ドイツでは近年、この時代を背景にした映画やテレビ作品が多く、それは「現代が当時の社会状況に似ているから」という声を聞くが?

DG:はい、その通りです。危機的な政治状況のために、ドイツでは今再び、あの時代への関心が急激に高まっています。私は間違いなく2022年のドイツ社会を当時と重ね合わせています。あのポーランドや右翼・左翼の間で引き裂かれ、政治が麻痺した共和国と。しかし今、ドイツだけではなく、世界中のほとんど全ての場所が同じ状況にあると言えるのではないでしょうか

また、監督の「ラブストーリー」という言葉を裏づけるようなシーンの本編映像を特別に公開。ファビアンが恋人のコルネリアに物語のキーにもなるドレスをプレゼントする場面で、恋に落ちて間もない2人の感情が瑞々しく、ベルリンで暮らす息子を心配して故郷からやってきたファビアンの母親の様子も胸を打つ。

『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』は6月10日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開。


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