東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の避難者が東電に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁が東電の賠償責任を確定する決定をしたことを受け、東電は5日、原告団に謝罪した。小早川智明社長名で原告団に直接謝罪したのは初めて。
福島県双葉町の町産業交流センターで、東電福島復興本社の高原一嘉代表と内田正明副代表が、原告団長の早川篤雄さん(82)=福島県楢葉町=らと面会。小早川社長名の謝罪文を読み上げ、手渡した。
謝罪文では「皆さまの人生を狂わせ、心身ともに取り返しのつかない被害を及ぼしたことに対し心から謝罪します」と強調。「事故を防げなかったことを深く反省している」「福島への責任の貫徹が最大の使命で、その責任を果たしていく」とした。
早川団長は「謝罪は全ての被害者に向けられたものと受け止める。謝罪の証しとして、誠意をもって自主的に(追加の)賠償することを求める」と述べた。
楢葉町で被災した原告団総括事務局長の金井直子さん(56)は「決して自分たちの力を過信せず、大企業のおごりを持たず、地域住民の生活を取り戻すための努力を一切惜しまないことを誓う言葉だと信じたい」と語った。
原告団、評価と憤りが交錯
東京電力から謝罪を受けた原告団は、東電の姿勢に一定の評価をしたが、不十分さを指摘する声もあった。
原告団団長の早川篤雄さん(82)は、謝罪後の記者会見で「社長が約束し、私たちが求める通りに復興と廃炉に責任を持ってもらわなければならないが、これはこれで一歩前進。『第1ラウンド』(終了)だ」と評価した。
しかし、副団長の国分富夫さん(77)は「怒りを感じる」と一蹴。小早川智明社長が直接謝罪しなかったことに対し「これだけの事故を起こしておいて社長が来ないのは常識的に考えてあり得ない。被害者を甘く見ている」と憤りをあらわにした。
弁護団は「歴史的な快挙」としつつ、東電が「確定判決を真摯(しんし)に受け止める」としなかったことなどを不十分と指摘。今後、未提訴の住民に対して原告団と同水準の賠償を求めるほか、除染の継続や廃炉作業の安全確保、医療支援など金銭の支払いで解決できない課題について東電と協議を進める方針を表明した。
原子力損害賠償紛争審査会は判決などを踏まえ、賠償基準を定めた中間指針の見直しの検討を始めた。最高裁は17日、原発事故に対する国の責任の有無について初の統一判断を下す。原告団と弁護団は17日以降を「第2ラウンド」と位置付ける。
小野寺利孝弁護士は「われわれが勝ち取った司法判断を最低限に、中間指針に正しく反映されることを期待している」とけん制。早川さんも「原発事故は国と東電の責任で、東電の謝罪だけではまだ半分。国の責任が認められない限り私の苦しみ、思いは晴れない。17日の結果がどうなろうと闘い続ける」と語った。
[東京電力・小早川智明社長名の謝罪文全文]
2022年6月5日
福島原発避難者訴訟第一陣原告団の皆さま
東京電力ホールディングス株式会社
代表執行役社長 小早川智明
原告の皆さまに対する謝罪について
当社の起こした事故により、皆さまのかけがえのない生活やふるさとにとても大きな損害を与えたことにより、皆さまの人生を狂わせ、心身ともに取り返しのつかない被害を及ぼすなど、様々な影響をもたらしたことに対し、心から謝罪いたします。誠に申し訳ございません。
当社事故の避難指示により、着の身着のまま、状況も不透明な中で緊急的に避難されたことや、慣れない土地での生活に対する大変なご苦労をおかけし、いつふるさとに戻ることが出来るのかといったご不安など大変な苦悩を抱えられたこと、また、いまだ当社事故による爪跡は大きく、11年の歳月が経過しても、まちの風景や情景が元に戻っていないことなど、事故による被害の甚大さについて、事故の当事者として、その責任を痛切に感じております。
当社は、あのような大きな事故を防げなかったことについて、深く反省しております。そして、社員に対して事故の反省と教訓を伝える研修などにより、事故の事実と向き合い、福島への責任を果たす覚悟と安全に関する意識の改革について、世代を超えて引き継ぎ、人が変わっても、これを企業文化として根付かせるべく取り組みを進めております。
また、一人でも多くの方にご帰還いただくことができるよう、福島の復興に向けた取り組みに注力することこそが、事故の当事者である当社が果たすべき「福島への責任」であると考えております。当社は、引き続き、地域の皆さまとよくご相談させていただきながら、帰還および地域の復興に向けた活動を進めてまいります。
今後、特定復興再生拠点の避難指示解除など、復興のステージが進み、避難されていた方々のご帰還、なりわいや地域コミュニティの再建・再生が進んでいくことに応じ、当社に求められる役割も変わっていくものと考えており、地域の皆さまからのご要望をつぶさにとらえ、当社で何ができるかを常に探しながら、一人でも多くの方々のお役に立てることを実施すべく、真摯に取り組んでまいりたいと考えております。
当社にとって、「福島への責任の貫徹」が最大の使命であり、その責任を果たすために存続を許された会社であることを社員全員が改めて肝に銘じ、福島復興本社代表の高原とともに、主体性を持って全力で取り組んでまいります。
以上
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