- 国際共同第III相臨床試験であるCOMMODORE 2試験、およびCOMMODORE 1試験等に基づくクロバリマブの承認申請
- 皮下投与可能(維持期)な抗補体C5抗体として承認申請
中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、抗補体C5リサイクリング抗体クロバリマブ(遺伝子組換え)について、発作性夜間ヘモグロビン尿症を対象とし、6月14日に厚生労働省へ製造販売承認申請を行いましたので、お知らせいたします。
代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「自社創製品のクロバリマブが、発作性夜間ヘモグロビン尿症を対象に日本での承認申請に至ったことを嬉しく思います」と述べるとともに、「PNHに対する標準治療である抗補体C5抗体として、クロバリマブは皮下投与による新たな価値の提供を目指します。維持期において、4週に1回の投与間隔で良好な有効性と安全性が示されており、投与時間の低減など患者さんの治療負担を軽減する新たな治療のオプションとなりえます。本剤をいちはやく患者さんにお届けできるよう、当局と連携のうえ引き続き取り組んでまいります」と語っています。
今回の承認申請は、C5阻害剤による治療歴のない発作性夜間ヘモグロビン尿症を対象としたCOMMODORE 2試験および、既存の補体阻害剤からクロバリマブに切り替えたPNH患者さんを対象としたCOMMODORE 1試験等の成績に基づいています。いずれもロシュとの協働による国際共同第III相臨床試験であり、国内からも参加しています。
クロバリマブは、中外製薬のリサイクリング抗体®技術を用いています。一般的な抗体では、抗原に一回しか結合することができないのに対し、クロバリマブは繰り返し抗原に結合するよう改変することで、低用量で持続的な補体阻害が可能となり、4週ごとの皮下投与を実現しています。
COMMODORE 1、2試験について
COMMODORE 2試験は、C5阻害剤による治療歴のない発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)患者さんを対象にエクリズマブに対するクロバリマブの有効性および安全性を評価するランダム化非盲検第III相臨床試験です。本試験に登録された204名の成人被験者*は2:1の比で4週ごとのクロバリマブ皮下投与群または2週ごとのエクリズマブ静脈内投与群にランダムに割り当てられました。18歳未満の被験者6名は記述的解析群に含まれ、4週ごとにクロバリマブが皮下投与されました1。
- *治験実施計画書改訂前に登録された18歳未満の2名を含む
COMMODORE 1試験は、既存の補体阻害剤からクロバリマブに切り替えたPNH患者さんを対象にクロバリマブの安全性を評価するランダム化非盲検第III相臨床試験です。この試験にはエクリズマブによる治療を受けている18歳以上の患者さん89名が登録され、1:1の比で4週ごとのクロバリマブ皮下投与群または2週ごとのエクリズマブ静脈内投与群にランダムに割り当てられました。非ランダム化群には、エクリズマブによる治療を受けている小児(18歳未満)の患者さん、ラブリズマブによる治療を受けている患者さん、エクリズマブによる適応外の用量(PNHに対して承認されている900mg/回より多い用量、2週間より高頻度での投与のいずれかもしくは両方)を受けている患者さん、既存の治療薬に対して効果が見られない特定のC5遺伝子変異を有する患者さんも含まれています2。
クロバリマブについて
クロバリマブは、中外製薬が開発したリサイクリング抗体®技術を用いた抗補体C5リサイクリング抗体です。リサイクリング抗体®は、抗原結合部位にpH依存性を持たせることで、1分子の抗体が繰り返し抗原に結合し、一般的な抗体に比べて長時間にわたり効果を発揮するようデザインされています。本剤は、補体系で重要な役割を担うC5を標的にすることで補体の活性化を制御するとともに、皮下注射による治療で患者さんおよび介護者の負担軽減をもたらすことが期待されています。クロバリマブは既存薬とは異なる部位でC5に結合することから、既存の抗体医薬品が結合しない特定のC5遺伝子変異を有する患者さん(日本人PNH患者さんの約3.2%)において有効な治療選択肢となり得ます3,4。
現在、発作性夜間ヘモグロビン尿症のほかに、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS:atypical hemolytic uremic syndrome)の開発を行っています。また、海外ではロシュが鎌状赤血球症(SCD:sickle cell disease)、ループス腎炎に対して臨床試験を実施しています。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)について
PNHは、PIG-A遺伝子に後天的に変異が生じた造血幹細胞がクローン性に拡大することにより、自己補体による血管内溶血を生じる造血幹細胞疾患です5。ヘモグロビン尿、血栓症などPNH特有の溶血に起因する症状と、再生不良性貧血と同様の造血不全症状の二面性を持ちますが、症状は患者さんにより異なります。合併症として、慢性腎臓病、肺高血圧症等を併発する場合があります。日本では指定難病の一つ(指定難病62)に数えられる希少な疾患であり、同疾患の令和3年度末の医療受給者証保持者数は、959人でした6。
上記本文中に記載されたリサイクリング抗体®は、法律により保護されています。
出典:
- COMMODORE 2 (NCT04434092). [Internet; cited June 2023] Available at: https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04434092.
- COMMODORE 1 (NCT04432584). [Internet; cited June 2023] Available at: https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04432584.
- Fukuzawa T, et al. Long lasting neutralization of C5 by SKY59, a novel recycling antibody, is a potential therapy for complement-mediated diseases. 2017; Sci Rep 7, 1080.
- Nishimura J et al. Genetic variants in C5 and poor response to eculizumab. N Engl J Med. 2014 Feb 13;370(7):632-9.
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ.発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版.
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)衛生行政報告例 / 令和3年度衛生行政報告例 統計表 年度報(2023年6月アクセス)
からの記事と詳細 ( 2023年06月14日|クロバリマブ、発作性夜間ヘモグロビン尿症に ... - 中外製薬 )
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