Monday, June 12, 2023

2023年06月12日|発作性夜間ヘモグロビン尿症に対し ... - 中外製薬

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、新規抗C5リサイクリングモノクローナル抗体であるクロバリマブの発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)に対する有効性と安全性を、現在の標準治療の一つであるエクリズマブと比較して評価する国際共同第III相臨床試験COMMODORE 1試験、およびCOMMODORE 2試験の良好なデータを発表したことをお知らせいたします。両試験のデータは2023年6月8~11日にドイツのフランクフルトで開催の欧州血液学会(EHA:European Hematology Association)ハイブリッド会議において発表されました。

 代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「クロバリマブの4週に一回の皮下投与は、投与時間の短縮や在宅での自己注射など、PNH患者さんの治療負担の軽減に繋がることが期待されます」と述べるとともに、「新たな治療を待ち望む患者さんや介護者の皆さんに対して、一日でも早くクロバリマブによるベネフィットをお届けできるよう、本剤のグローバルでの承認申請に向けて引き続きロシュと協働してまいります」と語っています。

 PNHは希少で生命にかかわりうる血液疾患であり、赤血球が自然免疫系の一部である補体系によって破壊され、貧血、疲労、血栓、腎疾患などの症状が生じます1。C5阻害剤はこの病態の治療に有効であることが示されています2。クロバリマブは、中外製薬のリサイクリング抗体®技術を用いています。繰り返し抗原に結合するよう改変することで、低用量で持続的な補体阻害が可能となり、4週ごとの皮下投与を実現しています3,4

 COMMODORE 2試験では、二つの主要評価項目に対する非劣性が検証されました。投与5週目から25週目までに溶血コントロールを達成した割合は、クロバリマブ群では79.3%(95%信頼区間:72.9-84.5)であったのに対し、エクリズマブ群では79.0%(95%信頼区間:69.7-86.0)でした。さらに、ベースラインから25週目までに輸血回避を達成した割合は、クロバリマブ群で65.7%(95%信頼区間:56.9-73.5)、エクリズマブ群では68.1%(95%信頼区間:55.7-78.5)でした。輸血回避は、濃厚赤血球輸血を受けず、かつ治験実施計画書に規定されたガイドラインに従った輸血を必要としない場合と定義しています。輸血の必要性は、PNHにおける補体調節障害に起因する溶血の重要な臨床的指標です。副次評価項目として設定された、疲労を評価する自記式尺度であるFACIT-Fatigueスコアにおいては、ベースラインから25週目までに臨床的に意味のある(5ポイント超)改善が両群で認められ、調整済み平均変化量はクロバリマブ群で7.8(95%信頼区間:6.5-9.1))、エクリズマブ群で5.2(95%信頼区間:3.4-6.9)でした5

 有害事象は、COMMODORE 2試験においてクロバリマブ投与群の78%、およびエクリズマブ投与群の80%に発現しました。重篤な感染症はクロバリマブ投与群の3%、エクリズマブ投与群の7%で発現し、髄膜炎菌感染症は認められませんでした。最もよく発現した有害事象は注入に伴う反応で、クロバリマブ投与群の16%、エクリズマブ投与群の13%に発現しました。投与中止に至った有害事象は各群で1例発現しました5

 COMMODORE 1試験の結果から、既存のC5阻害剤からクロバリマブに切り替えたPNH患者さんにおいて、クロバリマブにより病勢コントロールが維持されたことが示唆されました6。このデータは、COMMODORE 2試験で確認されたクロバリマブのベネフィット・リスクプロファイルを支持するものでした。また、両試験において在宅自己投与の実現可能性が示されました。

 また、ロシュ社は、COMMODORE Burden of Illness試験の予備データも発表しました。このデータから、既存のC5阻害剤による治療にもかかわらず、PNH患者さんの生活の質の低下や相当な費用負担があること、また、新たな治療選択肢によりPNH患者さんがベネフィットを得られる可能性が示唆されています7

 PNHを対象とした国際共同第III相臨床試験COMMODORE 1試験、およびCOMMODORE 2 試験のデータは、世界各国の規制当局に提出される予定です。中国で実施されたPNHを対象としたクロバリマブの3つ目の第III相臨床試験COMMODORE 3試験の肯定的なデータは、2022年12月10日に米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)年次総会において発表されました。同試験データは中華人民共和国 国家薬品監督管理局(NMPA:National Medical Products Administration)にBreakthrough Therapy指定による審査プロセス経由で提出され、承認に向けた優先審査品目に指定されています。

COMMODORE 1、2試験について
 COMMODORE 2試験は、C5阻害剤による治療歴のない発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)患者さんを対象にエクリズマブに対するクロバリマブの有効性および安全性を評価するランダム化非盲検第III相臨床試験です。本試験に登録された204名の成人被験者*は2:1の比で4週ごとのクロバリマブ皮下投与群または2週ごとのエクリズマブ静脈内投与群にランダムに割り当てられました。18歳未満の被験者6名は記述的解析群に含まれ、4週ごとにクロバリマブが皮下投与されました8

*治験実施計画書改訂前に登録された18歳未満の2名を含む

 COMMODORE 1試験は、既存の補体阻害剤からクロバリマブに切り替えたPNH患者さんを対象にクロバリマブの安全性を評価するランダム化非盲検第III相臨床試験です。この試験にはエクリズマブによる治療を受けている18歳以上の患者さん89名が登録され、1:1の比で4週ごとのクロバリマブ皮下投与群または2週ごとのエクリズマブ静脈内投与群にランダムに割り当てられました。非ランダム化群には、エクリズマブによる治療を受けている小児(18歳未満)の患者さん、ラブリズマブによる治療を受けている患者さん、エクリズマブによる適応外の用量(PNHに対して承認されている900mg/回より多い用量、2週間より高頻度での投与のいずれかもしくは両方)を受けている患者さん、既存の治療薬に対して効果が見られない特定のC5遺伝子変異を有する患者さんも含まれています9

COMMODORE Burden of Illness試験について
 COMMODORE Burden of Illness(BOI)試験は、英国、フランス、ドイツにおける、患者さんおよび介護者のPNHに関連する直接的な医療費(治療および入院等)、直接的な非医療費(例:旅行)および間接的な費用(仕事の生産性および家族の負担への影響等)を定量化し、健康関連QOL(HRQoL)に対するPNHの影響を評価する試験です10

クロバリマブについて
 クロバリマブは、中外製薬が開発したリサイクリング抗体®技術を用いた抗補体C5リサイクリング抗体です。リサイクリング抗体®は、抗原結合部位にpH依存性を持たせることで、1分子の抗体が繰り返し抗原に結合し、一般的な抗体に比べて長時間にわたり効果を発揮するようデザインされています。本剤は、補体系で重要な役割を担うC5を標的にすることで補体の活性化を制御するとともに、皮下注射による治療で患者さんおよび介護者の負担軽減をもたらすことが期待されています。クロバリマブは既存薬とは異なる部位でC5に結合することから、既存の抗体医薬品が結合しない特定のC5遺伝子変異を有する患者さん(日本人PNH患者さんの約3.2%)において有効な治療選択肢となり得ます3,11
 現在、発作性夜間ヘモグロビン尿症のほかに、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS:atypical hemolytic uremic syndrome)の開発を行っています。また、海外ではロシュが鎌状赤血球症(SCD:sickle cell disease)、ループス腎炎に対して臨床試験を実施しています。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)について
 PNHは、PIG-A遺伝子に後天的に変異が生じた造血幹細胞がクローン性に拡大することにより、自己補体による血管内溶血を生じる造血幹細胞疾患です12。ヘモグロビン尿、血栓症などPNH特有の溶血に起因する症状と、再生不良性貧血と同様の造血不全症状の二面性を持ちますが、症状は患者さんにより異なります。合併症として、慢性腎臓病、肺高血圧症等を併発する場合があります。日本では指定難病の一つ(指定難病62)に数えられる希少な疾患であり、同疾患の令和3年度末の医療受給者証保持者数は、959人でした13

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 2023年06月12日|発作性夜間ヘモグロビン尿症に対し ... - 中外製薬 )
https://ift.tt/iCMDnQ8
Share:

0 Comments:

Post a Comment