兵庫県尼崎市にある尼崎えびす神社で来月、ゲイカップルの神前結婚式が開かれる。古くから男女の結婚を前提としてきた神道。複数の神社関係者によると、同性同士の挙式については古事記の神話など「信仰上の理由」を背景に断るケースが大半を占めているが、「伝統は変容するもの」と受け入れる神社も出てきている。
LGBTQなど性的マイノリティーへの対応を巡っては、2022年6月、神社本庁を母体とする政治団体・神道政治連盟(神政連)が差別的な内容の文書を自民党員に配っていたことが問題化。神道としても向き合い方が問われている。
神社関係者によると、同性の神前結婚式を受け入れる神社はごく少数に限られているという。
神社本庁に取材を申し込むと、期日までに回答はなかった。県内外の約10神社に可否を聞くと、大半が「受け入れていない」と答えた。
一方で「今後どうするかは、神社界全体の問題」とする神職もおり、東京都の明治神宮は「神社本庁の見解を踏まえ、有識者も交えて検討していきたい」とした。
■裏切られたようで…
神前式を挙げるのは、尼崎市で暮らす松浦慶太さん(37)と桜井英哉さん(38)=仮名。当日は共に、はかま姿で指輪を交換する。式中は新郎新婦という呼称を使わず、男女を連想する表現は避けるよう祝詞の内容も変更する。
2人が神前式を選んだのは、神政連の問題がきっかけだった。「同性愛は後天的な精神の障害、または依存症」。文書にはそう記されていた。
「ずっと身近な存在だと思っていた神社に裏切られたような気がして」
ショックを受けたからこそ、問題提起も込めて「挙式のできる神社」を探すことにした。
しかし、2人の心は何度も折れかけた。直接訪ねたり、電話をかけたりして挙式できる神社を探し、断られ続けた。
唯一、受け入れてくれたのが地元の尼崎えびす神社だった。松浦さんが話す。
「2人で暮らすまちに尼崎えびすさんのような神社があって誇らしい。少しずつでも、そんな神社が増えるとうれしい」
■やおよろずの神様
尼崎えびす神社の太田垣亘世宮司は「偏見もなければ特別視することもなかった」という。
「地域の人たちが幸せを願う場所であることが、うちのような地域の神社の役割なので。尼崎は多様性のまちですしね」
海外生活が長く、神職として現地で神前結婚式に立ち会った経験もある。異教徒間や夫婦別姓など式のあり方は多様だった。「いろんな配慮をしながらバラエティーに富んだ結婚式をしてきました」。ゲイやレズビアンの友人はたくさんいる。
伝統は変容するものだと考えている。とはいえ、「それぞれの宮司さんのお考えがある。今は時代の過渡期なのかもしれない」と思う。
祝詞や誓詞といった式の内容は、2人と相談しながら決めてもらった。ただ、LGBTQを象徴する虹色にちなみ、参列者がカラフルな衣装を身に着けることは「あくまで神前なので」と控えてもらった。
式を前に、太田垣宮司は「選択肢の一つになれたのであれば良かった」とし「やおよろずの神というくらい、神道の神様は多様性に満ちていて、今の社会に通ずるものがある。大事にしていきたい」と話した。(大田将之)
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