株式会社リコーは4日、2022年度上期(2022年4月~9月)連結業績を発表した。
売上高が前年同期比15.4%増の9735億円、営業利益が前年同期比79.0%増の234億円、税引前利益は前年同期比36.2%増の153億円、当期純利益は前年同期比33.7%増の149億円となった。
リコー コーポレート執行役員兼CFOの川口俊氏は、「営業利益は前年比で1.8倍となり、全ビジネスユニットで増収増益を達成した。しかし、想定に対しては下振れの業績となっている。オフィスプリンティングでは、上海ロックダウンの影響が8月半ばまで残り、ハードウェアの市場への供給が遅れた。8月半ば以降、生産体制が正常化してきた。オフィスサービスは、日本では一部商材の不足影響は残るが、2022年9月からICT商材に依存しないソリューションを用意し、インボイス制度や電帳法対応に関連したスクラムパッケージを提供。それに関連したセールス教育も進めてきた成果があがっている。欧州や米州は、買収した会社とのシナジーも含め、前年伸長を継続している。また、原価アップの影響は、プライシングコントロールによって吸収できている」と総括した。
セグメント別の概況
セグメント別では、リコーデジタルサービスは、売上高が前年同期比11.6%増7682億円、営業利益は50億円増の98億円。「オフィスサービスは前年同期比2桁の成長となった」と好調ぶりを強調。2022年度上期のスクラムパッケージの売上高は前年同期比10%減の218億円となったが、販売本数は同5%増の3万7772本。スクラムアセットは前年同期比69%増の188億円、スクラムシリーズ合計では前年同期比15%増の406億円になった。
「スクラムパッケージは、ICT商材に依存しない24シナリオを用意。同時にセールス教育を徹底しており、お客さまに正しく、正確に届けることに力を注いでいる。その結果、9月から効果が生まれており、通常は月間6000~7000本の販売本数が、9月は約9100本と過去最高となった。スクラムアセットも高い成長を遂げており、システム導入後の運用代行、仮想化集約、セキュリティ関連を中心に好調である。10月21日には、RICOH kintone plusを発売した。kintoneの認定資格を取得し、内容をしっかりと理解した上で提供できる準備が整っている」と述べた。
オフィスサービスは、海外でも堅調に推移。欧州では売上高が前年同期比26.7%増の930億円となった。買収企業の売上高は前年同期比21%増となっているほか、働く環境を変革しながら、セキュリティを強化する「Leading Change at Work(LCAW)キャンペーン」による受注額が増加。米州の売上高も前年同期比29.1%増の657億円となり、BPSオンサイトサービスを、既存顧客にソリューション提案する活動を強化したほか、医療、金融、小売の重点3業種での取り組みが成果につながっているという。
リコーデジタルプロダクツは、売上高が前年同期比18.9%増の2124億円、営業利益は48億円増の220億円。「上海ロックダウンが解除後、6月には生産体制が正常化したが、一部部材の調達に不安定な状況が残っている」という。
リコーグラフィックコミュニケーションズは、売上高が前年同期比25.1%増の1088億円、営業利益は35億円増の38億円。商用印刷のノンハードが堅調に回復したことで増収増益となった。リコーインダストリアルソリューションズは、売上高が前年同期比22.4%増の663億円、営業利益は3億円増となったものの、マイナス3億円の赤字となった。原価や輸送費、エネルギーなどのコストアップに対して、機動的なプライシングコントロールで対応しているという。その他分野は、売上高が前年同期比1.9%増の337億円、営業損失は34億円増となったが、マイナス40億円の赤字が残った。ここには、PFUの連結が加わっている。
通期見通しを修正、売上高は期初公表値から500億円増も、営業利益は50億円減
一方、2022年度通期業績見通しを修正。売上高は期初公表値から500億円増とし、前年比19.4%増の2兆1000億円、営業利益は期初公表値から50億円減、前年比112.2%増の850億円、税引前利益は期初公表値から63億円減、前年比97.6%増の877億円、当期純利益が期初公表値から60億円減、前年比87.7%増の570億円とした。
「売上高はPFUの連結効果、為替のプラス影響が要因。だが、営業利益は一部部材の調達や、サプライチェーンリスクを考慮して下方修正した。これはサプライヤーにおいて急な生産トラブルが発生した影響である。年度内には解消することが確認できており、毎週、状況は好転している。部材購入が遅れているものが11月、12月に入ってきているが、これが一気に入ってきても、一気に作れるか、一気にお客さまに届けられるかという課題がある。結果としてリスクがあると判断した。さらに、PCやサーバーなどのICT商材の調達にはまだ不安が残る。第3四半期は、第4四半期以降に向けて準備を整える時期になる」などとした。
2022年度は、第20次中期経営計画の最終年度となり、売上高2兆円、営業利益1000億円、営業利益率5%、ROE9%以上を掲げている。新たな見通しでは、売上高では2兆1000億円と計画を上回ることになるが、営業利益は850億円となり、ROEは6.0%以上と計画を下回ることになる
リコーの山下良則社長は、「財務目標の達成見通しは変更したものの、経営基盤の強化は当初の狙い通り着実に進展している。2021年4月からの社内カンバニー制への移行後、自律的な事業運営を進めており、市場で発生した事案に迅速に対応しながら、体質強化に向けた取り組みを加速している」と述べた。
今回の会見では、2022年度下期の方向性と、2023年度からスタートする次期中期経営計画の方向性について、リコーの山下社長が説明した。
山下代表取締役CEOは、「難局が続いているが、デジタルサービスの企業になるという方向性は正しいという確信がある。欧州、米州のお客さまを訪問し、リコーの顧客接点部門の成長を目の当たりにし、変革への手応えを感じた」と切り出し、「デジタルサービスの会社になるために、それを支える人材が鍵になっている。2022年4月からリコー式ジョブ型人事制度を導入し、クラウド化による基幹システムの刷新も行った。OAの会社からの脱却が進んでいる」と述べた。
また、「事業成長は外部要因が影響しているが、体質強化の施策は前倒しで進めており、着実に進展している。2022年度下期以降はリスクに強い調達、生産のサプライチェーン整備と、ハードウェアに依存しないサービス販売に注力し、2022年度の目標達成に取り組む」とした。
さらに、下期は、「ICT商材に依存しない販売体質への転換を加速」、「デジタルサービス拡大に向けた成長投資の継続的な実行と刈り取り」、「サプライチェーンの安定化による受注残の解消と在庫の低減」、「社会課題解決型事業の育成」をテーマに掲げた。
ここでは、10月に国内販売を開始したRICOH kintone plusを、2023年1月から米州でも販売を開始。欧州では、今年度中に英国でのテストマーケティングを開始する計画を明らかにした。
「統合プラットフォームであるRSI(Ricoh Smart Integration)に、kintoneを連携させるとともに、21種類のパッケージにkintoneを入れ込むといったことを行っている。RICOH kintone plusは、リコー向けにプラスアルファの機能が入ったものになっており、数万本の販売目標を掲げている。6月以降、社内に『kintone予備校』を作り、kintoneを扱える人材が育っている。米国では、サイボウズの米国支社とリコーUSAが緊密に連携した準備を進めている。欧州はサイボウズの拠点がないため、リコーの社員が勉強をしている」とした。
さらに、「世界約40カ国で展開しているDocuWareは、売れているところと売れていないところがある。商品が良くても、お客さまとの密着度合いが弱いと売れないという経験をしている。日本でも販売を開始したが、まだあまり売れていない。日本では、kintone とDocuWareはパッケージに乗せることを進める予定であり、また、欧米ではRSIに対する理解が低いため、日本と同じように理解をさせる必要がある」などと述べた。
2022年7月に、欧州で買収した15社のトップと面談したことも報告。「これらの企業が集まることで、欧州での新たなリコーグループが生まれるという期待感を感じた。欧米で買収した企業が着実な成長を遂げている」との手応えを示した。
また、下期からPFUとのシナジーを本格化。業種業務に強いPFUスキャナーを活用し、ドキュメントまわりの提案を加速し、収益性を向上させるほか、PFUのソリューションを、リコーのITサービスのメニューに組み込む準備も整ったという。PFUとの人材交流も活性化させる考えだ。
社会課題の解決型事業の育成も強化。mRNA創薬の支援のほか、SmartVision、PLAiR、IJ電池の事業の立ち上げに向けた活動を加速するという。
成長投資5000億円の進捗と、次期中期経営計画について
なおリコーでは、2025年度までの成長投資として5000億円を計上しており、その進捗についても触れた。事業成長のためのM&A投資は3000億円の計画に対して進捗率は50%、経営基盤の強化では1000億円に対して進捗率は40%、新事業ドメイン創出への投資が1000億円に対して、25%の進捗率となっている。
「新事業ドメイン創出への投資での進捗率が低めだが、新規事業テーマの選別はほぼ終えている。重点事業のパートナーとの連携強化により、一気に進めていく段階にある。HDT(ヒューマンデジタルツイン)とIDPS(インダストリアルデジタルプリンティングシステム)の2領域に絞り込み、2023年度から本格的に投資を進めていく」と述べた。
次期中期経営計画については、「カンパニー制への早期移行、ビジネスユニットへの権限委譲、ROIC経営の徹底、ジョブ型人事制度の導入などの取り組みを行ってきた現在の中期経営計画によって、デジタルサービスの会社に向けた助走はほぼ完了した」と前置きし、「次期中期経営計画では、各地域の顧客接点における企画、開発機能を強化しながら、グローバルでの連携を実現し、成長を果たす。地域戦略の強化、グローバル人材への投資と活躍、提供商品価値の向上の3点がポイントになる。地域戦略は、各地域の特性や資産、強みを生かす」と述べた。
さらに、「高度成長期の日本型製造業は、本社主導で生産、開発を実施し、各地域は販売機能に専念し、製品を効率的に届けることが競争力につながっていた。本社主導で同一の価値を広くディストリビュートすることで成長してきた。だが、デジタルサービスの会社は、各地域の顧客とともに価値創出し、社員が自律的に顧客とつながり、価値創造する会社に変身しなくてはならない」と発言。
「本社は、各地域からのインプットをもとに、グローバル連携とプラットフォーム構築に注力するという姿を描いている。社員が自律的に活躍し、グローバルで展開できる環境づくりが大切である。販売機能として位置づけられていた各地域は、ソリューション開発機能を持ちながら、顧客に対する価値創造を行う必要がある。商品価値を向上させて、高い利益創出を実現することを目指す。これまでのすべての施策は、ユニークなエッジデバイスをうまく操るデジタルサービスの会社に生まれ変わるためのものであった。そのためのピースがそろってきた。リコーはデジタルサービスの提供価値のさらなる拡大を行いながら、働く人の創造力を支えるデジタルサービスの会社へと変革を加速する」と力強く語った。
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