特定の分野で卓越した技能をもつ職人を国が表彰する「現代の名工」に、小林工業(由利本荘市)で金型設計の開発に打ち込んだ伊藤清光さん(59)と、秋田酒類製造(秋田市)の杜氏(とうじ)で、品質の高い大吟醸酒の生産技術確立などに尽力した加藤均さん(66)の2人が選ばれた。このうちの1人、伊藤さんに喜びの声を聞いた。
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機械製図工の職種で表彰を受けた小林工業の伊藤清光さんは、金属の粉末を圧縮成形して複雑な形状の部品をつくり出す金型の設計業務に長く携わった。10年ほど前、部品の側面の位置に凹凸を加工できる金型構造を考案。それまでは成形が難しかった技術で、特許を取得した。
この金型には、長く使っても不良品が出ないようにする工夫も施されており、世界各国の自動車関連会社から注文が相次いだ。様々な分野で生産コストの大幅な削減に貢献している。
伊藤さんは「設計のアイデアを出したのは自分だが、決して1人で成し遂げた業績ではない。実現に向けて、会社の様々な部署の人が努力を積み重ねてくれた結果だと思う」と話す。
由利本荘市出身。幼い頃、農機の使い方を周囲に教えていた父の姿をみて、エンジニアを志すように。秋田高専を卒業後、地元の小林工業に入った。設計部門への配属を希望し、初めはプラスチックを溶かして流し込み、固める射出成形機の金型づくりに励んだ。
「CAD」と呼ばれる3次元のコンピューター支援設計システムはまだなく、立体図面を手で描き上げるのは大変な作業だった。自分のミスで、他部署の同僚に迷惑をかけることもあり、設計は緊張の連続だった。ただ、伊藤さんは「今でもお客様を前にしたとき、フリーハンドで図を描いて説明すると伝わりやすいので、無駄な努力ではなかった」と振り返る。
最近は社内で後進を育てる役割も求められている。「製品のコスト、品質の8割は設計段階で決まる。それほど設計の役割は大きいんだよ」。仕事のやりがいを繰り返し伝える。
今後は、海外市場のさらなる開拓に挑む考えだ。10年前、社内公募に手を挙げて、ドイツで開かれた見本市への出展に関わった。技術者も英会話を身につけ、海外の顧客と商談できないと、世界に食い込めない。そう痛感した。
「世界には広い市場があり、我々の技術を、もっと使ってもらえる可能性がある。知的財産の分野でも、さらに高みを目指したい」と意欲を示す。(佐藤仁彦)
からの記事と詳細 ( 「現代の名工」秋田県内から2人:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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