自社が提供する価値のうち何がユーザーにとって代替可能か、はたまた不可能か、事業者は見定めることが必要だ。現代において代替不可能な価値としては、データ、ブランド、コミュニティーの3つがまず挙げられるだろう。
「アメリカ西部のカウボーイたちは、馬が死ぬと馬はそこに残していくが、どんなに砂漠を歩こうとも、鞍(くら)は自分で担いで往く。馬は消耗品であり、鞍は自分の体に馴染(なじ)んだインタフェースだからだ」(i)。
これは計算機科学者である和田英一氏の言葉だ。和田氏は高級キーボード「Happy Hacking Keyboard(ハッピー・ハッキング・キーボード)」の共同開発者。上の言葉はキーボードの重要性を語る際に用いられた。次のように続く。「いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない」
筆者はこの「馬は死ぬが、鞍は残る」という話が好きだ。これは「インタフェースが大切」という話にとどまらない。提供する価値の主従を見定めよ、という戒めと理解している。馬と鞍の関係について普通に考えれば、馬こそが提供価値の「主」であり、鞍が「従」だ。鞍だけあっても何の役にも立たない。しかし、馬が希少財ではなくなると、慣れ親しんだ鞍こそが重要になる。何が代替可能であり、何が代替不可能であるかは、時代や環境とともに変わる。
上の話では、「馬(パソコン)」と「鞍(キーボード)」の提供事業者は別だが、1つの事業者の中でこの問題に取り組むこともある。自社が提供する馬が死んでも鞍は残したい、そして鞍の情けで、次の馬も自社のものを選んでもらいたい、というような場面だ。自社が提供する価値のうち、馬が死んでもなお残る「鞍」は何なのだろうか。
すぐに思いつくところでは、データ、ブランド、コミュニティーあたりが、「当世の鞍」としての役割を果たしているように思う。1つずつ見ていこう。
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