Friday, January 20, 2023

『Colossal Cave』“アドベンチャー”というジャンル名の語源になった作品がリメイクされて登場。現代の作品とは違う異質なノリを楽しめるか? - ファミ通.com

 “アドベンチャーゲーム”の語源になった作品をリメイクした風変わりな作品『Colossal Cave』を紹介しましょう。本作はプレイステーション5/PC/Meta Quest(VR)版が日本語対応で配信中。Xbox Series X/Nintendo Switch版も存在しますが、本記事の執筆時点では日本での配信が行われていません。(※追記: Xbox/Switch版は少し遅れているものの、どちらも日本でリリース予定とのこと)

目次閉じる開く

“アドベンチャーゲーム”の原点

 本作のオリジナル版である『Adventure』は、1976年に当時のメインフレームコンピューターであるPDP-10向けに作られたテキストアドベンチャーゲーム。これは“アドベンチャーゲーム”というジャンル名が生まれる前のことで、“Adventure”とは本当に単に“冒険”という意味しかありませんでした。

 当初はタイトルすらなく、冒頭で表示されるテキスト「冒険にようこそ!(Welcome to Adventure)」やそのファイル名から“Adventure”とか“ADVENT”といった通称で呼ばれていて、後に巨大な洞窟(Colossal cave)を探索していく冒険物語なので『Colossal Cave Adventure』と呼ばれるようになった……というぐらいの太古の代物です。

Adventure
「Welcome to Adventure」と書かれていたのがアドベンチャーゲームのはじまり。

 先に便宜上“テキストアドベンチャーゲーム”と書きましたが、これも2Dのグラフィックを背景にテキストメインでストーリーが進展していく現在のビジュアルノベルなどのスタイルのことではありません。

 そもそもこの時点でアドベンチャーゲームとは「Adventureみたいなゲーム」のことであり、それは本当に絵素材皆無で100%テキストの説明だけで進んでいくものでした。Internet Archiveで派生バージョン(1996年のDOS版)を簡単にプレイできるのですが、すべての状況説明はテキストで行われ、それに対してテキストでコマンドを指示していくことで冒険を進めていきます。

“アドベンチャーゲームの女王”とグラフィカルアドベンチャーゲームの誕生

 当時この原始的なゲームをプレイした人の中に、ロバータ・ウィリアムズという若い女性プログラマーがいました。彼女はテキストだけで進行する『Adventure』やその派生作品と差別化するために、線画を加えることを思いつきます。そうして生まれたのが『Mystery House』で、これが“グラフィックつきのAdventure系ゲーム”であるグラフィカルアドベンチャーゲームの走りとなります。

Mystery House
『Mystery House』は線画で絵を出したことが新しかった。

 その後、夫であるケン・ウィリアムズ氏とともに『King’s Quest』シリーズや実写映像を使ったアドベンチャーゲーム『ファンタズム』などを手掛け、アドベンチャーゲームというジャンルを発展させたアドベンチャーゲームの女王が、そのすべての発端である“Adventure”のリメイクに挑んだのが今回の『Colossal Cave』というわけです。

一人称視点3D化&VR対応

 教科書的な作品の背景説明はこの辺にして、『Colossal Cave』がどういう作品かといえば、シンプルに「『Adventure』を一人称視点3Dにしたもの」というものです。

 それ以外のゲームデザイン的な部分はあまり違いがありません。洞窟を探索して各所で入手したカギとなるアイテムで謎解きしつつ、ポイント対象になる宝物を持ち帰ってハイスコアを目指す(最高350点)というゲームです。

Colossal Cave
ドラゴンに対峙することもあるが、それも謎解きのひとつ。リアルタイムバトルをするわけではない。

 オープニングの井戸小屋から洞窟の中のダンジョンまで、オリジナル版ではテキストだけで説明されていたものが3Dの一人称視点で表現されています。

 “最新の3Dグラフィックス”という感じではありませんが、そのかわりにMeta Quest向けのVR版も存在するのがポイントです(ただし、そこそこの価格なのにPC版やPS5版がVRとの両対応ではないのは残念なところ)。

Colossal Cave
各所にある宝物を回収してポイントを稼いでいく。

地味に重要なナレーションの追加

 一方で、英語のボイスナレーション(日本語字幕付き)がついていたりもします。『Colossal Cave』がグラフィック的には主観的に体感するものになっている中で、これは個人的に結構重要です。

 1970年代当時の人をテキストだけで想像させて楽しませるという性質上、ダンジョンでは結構素っ頓狂なことが起こるんですが、いまの洗練されたゲームに慣れてしまった身からするとあまりにも唐突すぎるし、グラフィック的にもあまり驚きがなかったりします。

 でもナレーションがあることで、少なくとも『Adventure』本来の形である“目の前で起こる不可思議なことを客観的に説明される”という体験ができます。恐らくこれがなかったら、単に古臭くてわかりにくいゲームと感じていたことでしょう。

Colossal Cave
ドワーフが現れてナイフぶん投げてきたという、本来「(多分外れるとはいえ)当たったらやり直しじゃん」という緊迫した場面なのだが、いまのゲームの基準に慣れちゃってるとちょっとアレ。

現在のゲーム文法とはかなり違う異質さを楽しめるかどうか

 そんなこんなで、ジャンルが確立される以前の作品だけに今のゲームとはノリがかなり違います。目的に対して「え、そんなことで解決できちゃうの?」という解法を見つけたり、「あーここ確か鳥かご使うよね」と知っているのが楽しいというゲームです。

 なので原作を知らない場合、現在のアドベンチャーゲームを基準に期待すると大いに混乱させられると思います。逆に先入観を捨てて目の前の冒険に向かい合えるならその奇想天外ぶりを楽しめるかもしれません(個人的には子供や友達なんかとああだこうだ言いながらユルく遊ぶのがオススメ)。

Colossal Cave
「XYZZYって何?」考えるな、感じるんだ。(※とある便利な機能を持つ魔法の言葉で、後にコンピューター業界でジョークコマンドなどに使われるようになった)

 となると今度は4000~5000円(プラットフォームによって異なる)という値段がネックになる人もいるだろうと思います。ウィッシュリストなどに入れてセール待ちをするのもいいんじゃないでしょうか。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 『Colossal Cave』“アドベンチャー”というジャンル名の語源になった作品がリメイクされて登場。現代の作品とは違う異質なノリを楽しめるか? - ファミ通.com )
https://ift.tt/rc4PZag
Share:

0 Comments:

Post a Comment