Tuesday, November 14, 2023

34歳同級生の結婚式にいったら、幸せそうな姿に落ち込んでしまい。思わず女は… - 東京カレンダー


陽平の覚悟


「もう、俺の実家に行くのはやめよう」

いつの間にか肌寒さを感じるようになった土曜日。

沙耶香の家で一緒に夕飯を取り、美桜を寝かしつけた後、陽平が唐突に言った。

今日は朝から大宮にある陽平の実家を訪れたが、玄関の前で少し話をしただけで、やはり何の進展もなかった。

陽平の実家を訪れる時は、少しの間、美桜を沙耶香の実家で見てもらっている。

そのため、行き帰りの電車は美桜も一緒で、陽平はいつものように明るく振る舞っていた。

そんな彼を見て、沙耶香も諦めずに何度も彼の実家に足を運ぶつもりでいたのに、とショックを受ける。

「どうして…?私との結婚が嫌になった?」

最近の疲れた様子や、小さな喧嘩が増えていたことなどを考えると、気持ちが冷めてしまったのでは、と不安になる。

心配そうな眼差しを向ける沙耶香に、陽平が優しく言った。

「いや、そうじゃない。ただ、もうこれ以上みんなに迷惑をかけたくないんだ。沙耶香にも、悲しい思いをしてほしくない」

「私は、覚悟をしていたから大丈夫だけど…」

沙耶香は否定したものの、美桜も実家も巻き込んでしまっている後ろめたさを感じた。

些細な表情を読み取ったように、陽平が沙耶香を見つめる。

「ありがとう。でも、これ以上は俺が嫌なんだ。美桜にも沙耶香にも負担をかけたくない。だから…」

陽平はそう言うと、大きく息を吸った。

「沙耶香がもし別れたければ、残念だけど受け入れるよ。でももし、時間がかかっても待っていてくれるなら、絶対に俺が説得して、許しをもらうよ」

陽平には幸せになってもらいたい。だからこそ、両親に受け入れてほしかった。

別れた方が陽平のためではないか、と沙耶香は実家へ行く度に考えた。でも…

「別れない。陽平が諦めない限り、私も絶対諦めない。いつになっても大丈夫だから」

沙耶香の決意を聞き、陽平は安堵の表情を浮かべる。

そして沙耶香をぎゅっと抱きしめると、「ありがとう」と耳元で囁いた。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 34歳同級生の結婚式にいったら、幸せそうな姿に落ち込んでしまい。思わず女は… - 東京カレンダー )
https://ift.tt/UIjEp31
Share:

0 Comments:

Post a Comment