Thursday, December 15, 2022

「現代の墨」の現物 書家・宇山栖霞さん遺品から574点を確認 - 毎日新聞

宇山栖霞さんの遺品にあった「雙鳳玦」。著書「現代の墨」に掲載された写真と同一だった=2022年12月7日午前11時、太田裕之撮影
宇山栖霞さんの遺品にあった「雙鳳玦」。著書「現代の墨」に掲載された写真と同一だった=2022年12月7日午前11時、太田裕之撮影

 2015年に91歳で亡くなった毎日書道展名誉会員、宇山栖霞(せいか)さんが著書「現代の墨」(全日本書道院)で紹介した墨の現物574点が、遺品の中から確認された。同書の資料を宇山さん自らが全国各地で収集していたことが分かり、遺族から譲り受けて調査した西日本の書道具卸会社の50代の男性社長は「偉業を改めて実感した」と話している。

 「現代の墨」は山口県の旧徳山市(現周南市)で全日本書道院を主宰していた宇山さんが1975年に出版。墨について、紀元前15世紀ごろからの中国と大和時代以降の日本のそれぞれの歴史、種類、製造法、使い方などを解説すると共に、全国38の製墨会社のリストや商品の目録を掲載した全798ページの大書だ。1950年代以降、宇山さん自らが各地で収集した中国産・日本産の古墨・銘墨などのコレクションが生かされていた。

 今回調査した卸会社は宇山さんと長年の取り引きがあり、担当者が一緒に製墨会社や販売店を回ったこともあったという。2022年8月、遺族の依頼で引き取った遺品の中に1500点ほどの墨があり、同書を参考に整理。中国産97・日本産352の計449点は写真付きで、中国産6・日本産119の計125点は商品名が、同書に記載されていたという。

宇山栖霞さんの遺品にあった「天府永蔵」。著書「現代の墨」に掲載された写真と同一だった=2022年12月7日午前11時1分、太田裕之撮影
宇山栖霞さんの遺品にあった「天府永蔵」。著書「現代の墨」に掲載された写真と同一だった=2022年12月7日午前11時1分、太田裕之撮影

 その一つ、「雙鳳玦(そうほうけつ)」は中国・明代の1621年に程君房(ていくんぼう)が製造したとされる古墨だ。一対の鳳凰、または二つ並んだ優れたものを意味する雙鳳玦の文字が表に、裏には飛ぶ鳳凰1羽と起立した鳳凰1羽の姿が施されている。同じく程君房の「天府永蔵」は全体にちりめんじわと亀甲紋様があり、刻も鮮やかな良墨の要素が保たれているとしながらも、康熙か乾隆時代に作られた仿古(ほうこ)(レプリカ)と鑑定されている。

 卸会社が遺族から聞いた話では、宇山さんは専門店巡りが大好きで、家族旅行の際も必ず現地の店を回り、晩年まで墨の収集をしていた。貴重な墨は温度と湿度の管理を要するため、同社では一般向けの展示などはできず、収集家などへの譲渡を検討している。

 男性社長は「宇山先生は墨のカタログなどを見るだけではなく、現物を入手して評価されていたことが改めて分かった。これだけの墨を集めて特集した書物は、後にも先にもないのではないか。その偉業を知ってほしい」と話している。【太田裕之】

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