全3巻の一つ。第1巻は「食の文明論」、第2巻は本書「食の現代社会論」。そして来年には「食の展望」が準備されている。
現代社会では全ての価値観が目まぐるしく変化している。食べるという行為は時代を映す鏡だ。常に飢えに直面していた時代は去った。現代人にとって食べることの満足はどこにあるのか、何のために現代人は食を選ぶのか。食べることの新しい意味を問うことは、現代とは何かを問うことにほかならない。本書では、食べることの意味を手がかりにして現代の行方を探っている。
本書の第1部「科学で見えた食の姿」は、遺伝子解析を筆頭に急速に発展した分析技術が、食べるという行為の動物性の名残と人間性の芽生えをあからさまにしている。そこでは人間は動物として生まれ、動物を捨てる姿が描かれる。
第2部「現代の食の姿」では、生きるために食べるという因果を忘れた現代人が、新たな意味やモチベーションを食の選択に求める姿があらわになる。情報社会は食べる意味を根底から変えようとしている。科学はその流れを爆発的に加速している。一方で、食の倫理を問う声も無視できない時代になった。人間のかつてのシンプルな営みから食べることがずいぶん遠くに行ってしまった。
第3部では、食の変貌が進む先に明るい未来があるのかどうかを展望する。果たして明るい未来の兆しはあるのか、慎重に読み取ってほしい。
◇出版=農文協
◇価格=5950円
◇副題=科学と人間の狭間から
◇ふしき・とおる 京都大学名誉教授。味の素食の文化フォーラム40周年記念出版で3年かけ編集。
からの記事と詳細 ( [編者は語る]「フォーラム人間の食 第2巻『食の現代社会論 ... - 日本農業新聞 )
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