Research Press Release
Scientific Reports
2022年5月20日
Psychology: People with neutral attitudes towards vaccines are closer to anti-vaccine views
140か国以上の人々のワクチンに対する態度を分析したところ、ワクチンに対して中立的な態度をとる人々は、ワクチン支持派の見解よりもワクチン反対派の見解に同調する可能性があることが明らかになった。この知見を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
ワクチンについては、その安全性と有効性が報告されているが、接種率が低下したために、これまで十分に管理されていた疾患(麻疹など)が流行し、世界保健機関(WHO)は、ワクチン忌避が公衆衛生に対する大きな脅威だと宣言した。
今回、Dino Carpentrasたちは、科学と健康に対する人々の態度に関する年次調査「ウェルカム・グローバル・モニター2018」によって収集された、144か国の14万9014人の人々のワクチンに対する態度に関するデータを分析した。Carpentrasたちは、この調査の回答者がワクチンを肯定的に受け止めているか、否定的に受け止めているか、どちらでもない(中立的)かをマッピングし、これらの異なった意見が互いにどのように関連しているのかを評価した。これまでの研究で、人間は自分に似た他者から特に強く影響を受けることが示唆されている。
Carpentrasたちは、ワクチンを肯定する意見が、ワクチンを否定する意見と中立的な意見から孤立している度合いがそれぞれ有意に高いことを明らかにした。ワクチンに強く反対する態度を1種類以上とる人の16%が、ワクチンに対して中立的な態度をとっていたのに対して、ワクチンを強く支持する態度を1種類以上とる人の10%のみが、ワクチンに対して中立的な態度をとっていた。これは、ワクチンに対して中立的な立場が、ワクチンを支持する態度よりもワクチンに反対する態度に近く、従って、中立的立場をとる人は、ワクチンに反対する人々との類似性が高いため、その影響を強く受ける可能性が高いことを示唆している。
また、Carpentrasたちは、2018~2019年のグローバル・ヘルス・オブザーバトリーのデータ(108か国のデータ)を分析し、ワクチンを肯定する意見が、中立的意見とワクチンを否定する意見から孤立している度合いが比較的高い国では、調査の翌年の麻疹ワクチンの接種率が低下しがちだったことを報告している。これと同様に、2018~2019年のワクチン信頼性プロジェクトのデータ(43か国のデータ)の分析の結果、ワクチンを肯定する立場の孤立度が高いことが、ワクチンへの不信感が広まることと相関していることが分かった。
Carpentrasたちは、今後の研究において、ワクチンに対する国民の信頼を形成する方法のみに重点を置くのではなく、ワクチンへの信頼が影響力を介して社会システムを通じて広がる仕組みの解明にも注力する必要があると示唆しており、このアプローチを気候変動などの諸問題にも適用できるかもしれないと結論付けている。
doi:10.1038/s41598-022-10069-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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