Monday, May 23, 2022

沖縄の「いま」 考えるために 『つながる沖縄近現代史』好評 若手研究者ら執筆 問題意識を前面に - 東京新聞

(左から)編著者の古波蔵契さん、前田勇樹さん、秋山道宏さん=前田さん提供

(左から)編著者の古波蔵契さん、前田勇樹さん、秋山道宏さん=前田さん提供

 沖縄近現代の歴史の入門書『つながる沖縄近現代史』(ボーダーインク、2420円)が好評を博している。執筆したのは、30〜40代を中心とする若手研究者ら25人。副題に「沖縄のいまを考えるための十五章と二十のコラム」とある通り、単なる通史ではなく、現在の問題や論点が明示され、それを踏まえて歴史の流れをたどることができるのが特徴だ。 (北爪三記)

 「しっかりといまの問題意識を前面に出して、そことつなげていく。各執筆者にかなり意識して書いてもらいました」。編著者の一人で、琉球沖縄史が専門の琉球大学付属図書館職員、前田勇樹さん(31)が説く。

 例えば、第二章「『琉球処分』の一四〇年」は、明治政府が琉球王国を解体し日本に併合した琉球処分の経緯にとどまらず、「琉球処分」という用語の歴史を探る。一九七〇年代までは奴隷解放や民族統一としてみる学説が主流だったが、八〇年代の琉球史研究の進展で現在の認識となったという。さらに、米軍普天間飛行場の移設問題を巡って自民党が二〇一三年、県外移設を求める同党の沖縄選出国会議員を辺野古容認に転じさせ、後に「平成の琉球処分」と呼ばれる例などを挙げて、<現在でも沖縄を取り巻く政治状況に対して、「琉球処分」は想起され続けており、意味づけ直されている>と論じる。

 第十章「アメリカ膨張史のなかの沖縄」のように、世界や、日本の他の地域とのつながりも意識的に取り入れた。構成にも工夫がある。本文の上に適宜配置した囲みは、他の章やコラムとつながりのある補足か、考えを深める視点の提示で、どちらか区別しやすいよう二つの印を使い分けた。

 版元のボーダーインク(那覇市)によると、昨年十一月末の刊行後、初版二千部はすぐに売り切れ、現在三刷。沖縄の日本復帰五十年の節目が迫る今年四月ごろから、県外からの注文も続いているという。前田さんも「同世代や二十代の若い世代が読んでくれている実感がある」と喜ぶ。

 もともと、研究の世界と社会をつなぐことができないか、と考えていたという前田さん。「特に沖縄は観光や教育で、歴史や文化に対する需要が高い。研究者が大学だけにこもっているのはもったいない状況なんです」と話す。

 出版に向けた準備と並行して、執筆陣ら仲間とユーチューブに「沖縄歴史倶楽部チャンネル」を開設。執筆者たちが本書について語り合う動画や出版記念トークショーの様子などを公開している。

 「沖縄の歴史に関する世界は非常に豊か。本書を入り口に、沖縄歴史倶楽部のコンテンツや参考文献に挙げた本を活用して、次の学びにつなげていってもらえたら」


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