Wednesday, April 3, 2024

「不適切にもほどがあるグラフ」とは? 定量調査【集計・分析編】 - 日経クロストレンド

連載第3回は定量調査の主流となっているインターネット調査の企画・設計について、「誰に聞くか」「何人の回答を集めるのか」「何を聞くか・どう聞くか」といったデータを集めるまでの「準備」が調査を成功させるためのポイントであることを解説しました。第4回は、実際に集まった回答データの「集計・分析」について解説します。

作為的なグラフは信用を失う(画像:motortion/stock.adobe.com)

作為的なグラフは信用を失う(画像:motortion/stock.adobe.com)

回答データを集計・分析する前に

 データが集まると、すぐに集計をして分析を始めたくなってしまうのですが、「目的、仮説は何か」を今一度確認しましょう。目的、仮説がはっきりしないまま集計や分析をしても、データに溺れてしまい非効率な作業が発生してしまいます。それどころか、せっかく調査をしても有用な示唆を導くことができません。

 調査が終了し、回答データが手元に届いたら、「なぜこの調査をしたのか」「調査をして何をしたかったのか」に立ち返ります。第2回で解説した調査依頼書(RFP)を見返してみるのがよいでしょう。ここまでの解説通りに進行できていれば、「調査課題の解決のために、どのサンプルの、どの設問を使って、どのようにデータを見たらよいか」が事前に計画できているはずですので、その計画に沿って集計と分析を進めていきます。

集計表の読み方

 データ分析の基本は、比較によって意味を見いだしていくことです。この点を意識して集計表を読んでいきましょう。

 ここでは、「あなたはこのアンケートにどのデバイスを使って回答しているか」という質問に対する回答データを例に解説していきます。なお、この調査では、1000人を母集団構成比割付で集めたとします(「割付」については第3回で解説)。

【1】単純集計(GT)で全体値を確認する
 まずは、回答者全体の数値を集計した単純集計(Grand Totalの略でGTとも呼ばれる)を確認します。母集団構成比割付で集めた回答データは、分析したい母集団全体の傾向を捉えることができます。

 ここでのポイントは、「PCでのアンケート回答者は半数を超えて53.1%で、スマートフォンの43.7%と比較して9.4pt高い」というように、選択肢間で比較し、その差で捉えるようにします。単に「過半数だから高い」と絶対値だけで解釈せず、2位との差分を見て、ポジション、全体像を把握します。

単純集計の例

単純集計の例

※データはダミー(以下同)

【2】クロス集計で分析軸ごとに確認する
 次にクロス集計で、分析軸ごとの傾向を詳細に分析していきます。クロス集計では、表側に分析軸(特徴を比較したい項目。クロス軸や集計軸、BD軸ともいう)、表頭には傾向を確認したい変数として主に調査票の選択肢が入ります。

※BD軸のBDは、Break Downの略

 実際に以下のクロス集計表を読み解くと、「スマホで回答する人は年代が若いほど多い。10~30代はスマホでの回答の方が多く、40代を境にPCでの回答の方が多くなる」という傾向が見えてきます。

 前半の内容は年代間の比較から、後半の内容は1つの年代の選択肢間の比較から読み解きました。このようにクロス集計は、「縦方向=集計軸間の比較」と「横方向=項目の選択肢間の比較」と、2つの視点で確認する必要があります。

クロス集計の例

クロス集計の例

 また、仮にこの調査を企画した時に、「インターネット調査の回答者の多くがスマホで回答する時代であるため、スマホでの回答に適したアンケート用Web画面の開発が必要なのではないか」という仮説を持っていたとしましょう。

 仮説をベースに改めて集計を見てみると、「仮説と異なり依然としてPCからアンケート回答する人が55.1%で最多だが、スマホでの回答者も41.7%いて大差はない。また、年代別では10~30代はスマホでの回答がメインとなっているため、今後はスマホでの回答者が今後増加していくことが予想される」という読み解きができます。

【クロス集計で集計軸間の比較をする際の注意点】
 全体結果を属性などの集計軸でクロス集計し、ブレイクダウンする場合には、全体に占める各軸のボリュームについて注意しましょう。

 例えば、集計軸のセグメントにおける市場の構成比が小さい場合、その集計軸に注目しても全体には大きな影響を及ぼさない可能性があります。具体的なアクションにつながる示唆が得られる場合を除き、その集計軸に注目することのマーケティング上のインパクトも意識して読み解く必要があります。

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