[ロサンゼルス/ニューヨーク 30日 ロイター] - 米国では、年末商戦の幕開けとなるブラックフライデーやサイバーマンデーにオンライン購入した商品の返品を望む顧客に対し、返送にかかるコストが商品価値を上回るような商品は返送しないよう求め、返金だけに応じる小売業者が増えている。
返品サービス会社goTRGがウォルマートやアマゾン・ドット・コム(AMZN.O)など主要小売企業21社の幹部500人を対象に調査したところ、こうした「返品無し返金」を採用している割合が今年は59%に上った。
goTRGのセンダー・シャミス最高経営責任者(CEO)によると、昨年はこの割合が26%だった。
余分なコストを徹底的に省くテクノロジーを導入する小売企業が増えるにつれ、特定のオンライン購入に対して返品不要方針を採用する企業が増えているとシャミス氏は語る。ただ、買い物客がこの制度を悪用する恐れがあるため、こうした情報を「小売業者は表に出したがらない」という。
別の返品サービス会社、オプトロによると、今年の米年末商戦では、返品が昨年より28%増えて1730億ドル(25兆5300億円)相当に達する見通しだ。
同社のアメナ・アリCEOは、「返品のスーパーボールはブラックフライデーの翌日に始まり、2月まで続く」と語り、返品処理の繁忙期を米国最大のスポーツイベントであるプロフットボールNFLの王者決定戦に例えた。
返品対応には通常30ドル前後のコストがかかる。輸送、仕分け、再販売(多くの場合、値引きされる)の費用がかかり、赤字を出して処分することもあるため、利益を圧迫する。そのため今年は90%近い小売業者がさまざまな方針を見直したとアリ氏は言う。こうした変更には、一部返品を有料化したり、オンラインでの購入商品を実店舗に返品するよう求めたりすることが含まれる。
アリ氏は返品コストについて、「見過ごすわけにはいかないものだ」と語った。
ウォルマート(WMT.N)は2月、動画共有サイトのユーチューブに、同社マーケットプレイスを利用する販売業者向けに、「返品無し返金」ポリシーの設定方法について解説する動画を載せた。ロイターは最近それを閲覧した。
この件についてウォルマートは、同社は交換や返品について検討する際、顧客体験と自社の利益のバランスを取っていると指摘。その一環として、第三者である販売業者によるコスト管理を助ける方法を探っているが、この解説動画は古く、現在は非公開にしていると説明した。
ロイターの取材に応じた買い物客17人は、アマゾンやイーベイ(EBAY.O)などの企業から、20ドル前後から300ドル程度の商品を返品しないよう求められたと語った。この中には欠陥品や誤配品も含まれるという。
アマゾンは「利便性のため、また価格を低く抑えるために」、少数の返品については返送しないことを顧客に認めているとした。
<返品ラッシュ>
アプリス・リテールと全米小売り連盟のデータによると、昨年の返品率はパンデミック以前の2倍近くに達し、米国の小売売上高全体の16.5%を占める8168億ドル相当の商品が返品された。
下着、寝具、食品の販売業者は、衛生上の懸念や健康安全上の規則に基づき、返品不要ポリシーを真っ先に採用していた。補整下着のシェーパーミント社は、返品したい商品を寄付したり友人にプレゼントしたりするよう顧客に求めることで、自社への忠誠心を高めるポリシーを採用している。同社を所有するトラフィレア社のブランド・ディレクター、ガブリエル・リチャーズ氏が明らかにした。
返品不要の慣行が主流になったのは、パンデミック初期のオンライン購入ブームで、送料が高騰し、倉庫がパンクした時期だ。企業は、不要になったTシャツやペットのおもちゃ、家具などを引き取ることをやめた。
最近では、小売業者は返品にかかるコストと買い物客の価値を天秤にかけている。大口の買い物客ほど、返品不要ポリシーの適用条件を満たしやすいと専門家は指摘する。
アマゾンやシェーパーミント、その他の小売業者は、不正行為と闘うため、信頼できる顧客にサービスを提供するためのテクノロジーを利用している。
アマゾンは「当社は不正行為を非常に深刻に受け止めており、悪質な者が我々の管理から逃れようとした場合には行動を起こし、法執行機関と協力して責任を追及している」とした。
ただ、一部の不正防止策は買い物客を遠ざけている。
ロサンゼルス在住の写真家、パメラ・ピーターズさんは夏の終わりごろ、熱風を吹き出す300ドルのポータブル・エアコンを返品せずに購入代金を返金してもらった。ただ、そのためには電源コードをが切れた状態の商品の写真をアマゾンの販売業者に送らなければならなかった。
ピーターズさんは、この商品を処分して別の店で代替品を購入。「非常にもったいないことだ」と語った。
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