米国で今世紀になって、男女の賃金格差解消ペースが鈍化していることが米国シンクタンク調査からわかった。
シンクタンクのピュー・リサーチ・センターは3月1日、男女の賃金格差に関する調査結果(注)を発表した。それによると、1982年は男性の収入1ドルに対して女性は65セントから、2002年には男性1ドルに対して女性80セントまで伸びた。だが、2022年の女性の収入は男性1ドルに対して82セントまでしか伸びておらず、過去20年間の賃金格差解消のペースが遅くなっている。
その要因は1つではなく、複数の要因が絡み合っているという。
要因の1つとして挙げられたのが育児だ。子供のいる女性は子供のいない女性に比べて労働時間が短くなる傾向がある半面、子供のいる男性は子供のいない男性よりも労働時間が長くなり、賃金も上がる傾向にあるという。これは「父親賃金プレミアム」と呼ばれる現象で、父親の賃金上昇が男女の賃金格差を拡大させる要因の1つとして説明されている。
また、女性の年齢が上がるにつれて、同年齢の男性に対して相対的に給与が減少する傾向も示された。例として、2010年に25~34歳の女性の収入は同年代の男性の92%だったが、2022年に37~46歳の女性の収入は男性の84%に低下した。2005年や2000年などに25~34歳だったグループでも繰り返されており、将来も同じ可能性があると示唆した。これは、140万人の若い女性が労働力から引き離されたことに相当するとし、子供のいる女性が就業している場合、他の同年代の女性よりも週当たりの労働時間が短くなる傾向(平均で週2時間程度)があるとしている。
女性の学歴が上がっているにもかかわらず、男女の賃金格差解消が進んでない点も指摘されている。1982年に25歳以上の被雇用者のうち、学士号以上の学歴を持つ女性は1982年の20%から2022年には48%に上昇し、男性の41%を上回った。しかし、1980年代に急速に増加した大卒の労働者の賃金上昇は2010年ごろに終わり、女性の所得の相対的な伸びを低下させたと説明している。
結論として、男女の賃金格差の是正がより持続的に進むには、男女がキャリアと家庭生活をどのように両立させるかに影響する社会的・文化的規範や職場の柔軟性がより深く変化することが必要としている。
ホワイトハウスは2月27日に国家ジェンダー公平・平等戦略(NGS)の優先課題に対する初の進捗報告書を発表し、ジェンダーの平等実現に向けた具体策を明らかにしている。
(注)データは米国の1982~2022年の人口動態調査(Current Population Survey)に基づく。
(松岡智恵子)
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