Friday, March 10, 2023

スモールワールド〜上流階級の社会〜:友人の結婚式で受付を頼まれて、招待客リストに驚愕!そこには、ある人物が - 東京カレンダー


Vol.1 A.M.10:30 挙式
   新郎友人・野尻優斗(医師・35歳)


― うー、体が重い…。

昨日の緊急手術は思いのほか長引き、帰宅できたのは朝方の4時を回っていた。

自宅に戻り、シャワーを浴びて1時間ほど仮眠したあと、僕は、朝から慶應の医学部時代の友人の結婚式へと来ている。

疲れが抜けないのも仕方がない。

小児外科医としての仕事はやりがいのあるものだけれど、人並みに休みも取れないこの生活に全く嫌気がささないと言ったら、嘘になるだろう。

僕は、くさくさした気持ちが表に出てしまわないよう、日頃診察室で小さな子どもたちを相手にしているのと同じ笑顔を顔に張り付ける。

…本当は、わかっている。

体が重く、気分が優れないのは、ここが結婚式会場だからだ。

婚約を破棄されたばかりの僕に、今、他人の結婚を祝う心の余裕はない。

― ほの香。どうして…。

3ヶ月前に自分を捨てた婚約者の名前を、未練がましく心の中でつぶやく。

3ヶ月前に自分を捨てて───先月、違う男と結婚したという、元婚約者の名前を。

気を抜くとすぐにこうして、憎しみとも悲しみともつかない気持ちが溢れ出してくる。

ほの香の裏切りを知ってからというもの、僕は終始この調子だ。

ほの香の結婚式ではないものの、こんな気持ちで、人様の結婚を祝えるわけない。

結婚というものに何の希望も抱けなくなった今、この場にいることはある種の拷問のようだった。

張り付けた笑顔も、長くは持ちそうにない。

そう思ったその時、荘厳なオルガンの音がチャペルに鳴り響いた。

後方にそびえる重たい観音開きの扉が、うやうやしく開かれる。

美しい花嫁と、ぎこちない新婦父の姿が現れる…とあくびまぎれに思っていた僕は、次の瞬間、思わず目を見開いた。

― そんな、まさか…!?

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