新旧王者の夢の対決となった第72期ALSOK杯王将戦は12日、5冠王の藤井聡太王将(20)が2連覇を決めて幕を下ろした。タイトル戦は負け無しの12連勝だ。しかし盤石の勝利とまでは言えなかった。挑戦者決定リーグを6戦全勝で勝ち抜いた羽生善治九段(52)は老練な勝負術で藤井王将を随所で苦しめ、シリーズは白熱した。
佐賀県上峰町の大幸園で指された第6局。角換わり早繰り銀の戦いは、最後、藤井王将が切れ味鋭く攻め込み、羽生九段の玉を即詰みに仕留めた。対局室に報道陣が詰めかける。「8時間という長い持ち時間で6局指すことができ、羽生先生の強さであったり、自分の課題をより感じたところはありました」。記者の質問に藤井王将が小声で応じる。羽生九段も「いろいろな変化とか読み筋がたくさん出てくるので、大変なところでもありましたけど、非常に勉強になったところもあったシリーズでした」と呼応するように答えた。
2勝2敗のタイに追いつかれて迎えた第5局(島根県大田市)。藤井王将は対局前の取材に「1局ごとに工夫されている印象を持っている。独自の感覚や指し手というものを今まで以上に感じる」と羽生九段との初めてのタイトル戦の感想を語った。
そんな思いが微妙に指し手を狂わせるのか。第4局(東京都立川市)では2時間24分考えた封じ手が敗着になった。その後の羽生九段の攻めの厳しさに気づいていなかったという。藤井王将にしては極めて珍しいことだった。「横歩取り」の乱戦となった第5局も、終盤の羽生九段の粘りの手を見て1時間15分の長考を強いられた。しかも、着手した攻めの手がぬるく、優位だった形勢は互角に戻った。「空振りになってしまった」と悔やんだ。
AI(人工知能)抜きには語れなくなった将棋界。藤井王将と数多くのタイトル戦を繰り広げている豊島将之九段(32)はいち早くAIを研究に取り入れ棋力を高めた。渡辺明名人・棋王(38)も高性能のパソコンとソフトを使っている。
しかし、藤井王将と32歳の年齢差がある羽生九段は、AIの登場以前に自分の将棋を確立していた。藤井王将は「今シリーズは戦型もさまざまな展開になり、序盤から一手ごとに考えながらという将棋が多かった。その点では今までのタイトル戦と比べても充実感があったかなと思います」と羽生九段との激闘を振り返った。
師匠の杉本昌隆八段(54)は「羽生九段はこれまでとは違う藤井王将との戦い方を示した。それだけに今回の防衛には大きな意味があり、得たものが大きいシリーズだった」と話した。【新土居仁昌】
2023-03-12 11:23:24Z
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