カップルの特別な一日を街の人たちと一緒に祝おう−。レトロな外観で親しまれている国立市の旧国立駅舎で一月、そんなコンセプトの結婚式が初めて行われた。駅を行き交う人もゲストに加わる開放的な式は、地元の人たちが協力してつくり上げた。見知らぬ市民同士を結び付け、地域づくりにつなげたいとの思いが込められている。
駅舎の赤い三角屋根が映える青空が広がった一月二十二日。入り口に掲げられた「コミュニティーウエディング」の文字に引き寄せられるように通行人らが足を止め、開け放たれた窓から中の様子をうかがった。広間には新郎新婦の親族ら招待客が参列。国立音楽大生のピアノ演奏に合わせ、新郎新婦が入場すると、会場周辺は拍手で沸いた。
新郎は広島市出身の高野宏さん(32)、新婦は名古屋市出身の早紀さん(31)。大学進学を機に上京した二人は、インカレ合唱サークルで知り合い意気投合。二〇二〇年九月、交際十年の節目に婚姻届を出し、国立市で暮らしている。
◆ホームだと思える場所
結婚の誓いを招待客に承認してもらう人前式で、二人はなれ初めをまとめた「ストーリーブック」を読み上げた。「ホームだと思える場所を見つけることができた」(早紀さん)、「この街で多くの方に支えられて生きてきた」(宏さん)。学生時代から続く国立での思い出を振り返り、街への感謝の言葉を紡いでいった。
◆ドレスのまま商店街へ
ウエディングドレスや祭壇の製作、ビデオ撮影に音楽…。あらゆる場面で地域の人たちが携わった。式が終わると、二人は晴れ着姿のまま近くの商店街へ。会場を飾った花をコミュニティーフラワーと称し、協力してくれた関係者やなじみの飲食店などにお礼のメッセージを添えておすそ分けした。
宏さんは一橋大(本部・国立市)を卒業し、就労支援施設の職員として働きながら、市内の有志グループ「街kadode実行委員会(まちかどで)」の代表を務めている。卒業式や成人式の記念撮影を市内で演出するなど、一人一人のハレの日を街の人と共有する空間づくりに携わってきた。
◆コロナ禍 延期乗り越え
次のステップが誰もが参加できるコミュニティーウエディングだった。「まずは自分たちの体験をもとに魅力を伝えよう」と第一弾はセルフプロデュースした。実は高野さん夫妻は当初、横浜で結婚式を予定していたが、コロナ禍の影響で中止に。コミュニティーウエディングも昨年九月の予定から延期となっており、ようやく念願がかなった。
「普段と全く違う景色で、不思議な開放感があった。何より知らない人に祝ってもらえて前向きな気持ちになれた」と魅力を語る宏さん。駅舎での挙式は今後も不定期に企画する予定で、まちかどでコーディネーターの佐藤和之さん(40)は「レトロな駅舎は絵になる空間。式を挙げたい人はぜひ相談を」と呼び掛けている。
<旧国立駅舎> JR中央線の立体高架化工事に伴って2006年に解体された木造駅舎を、1926(大正15)年の創建当時の姿のまま再築した公共施設。2020年開設。赤い三角屋根やロマネスク風の半円アーチ窓などが特徴。約7割は当時の建材を再利用し、国立市の有形文化財に指定されている。中央のスペースに駅前ピアノが置かれ、待ち合わせ場所や展示会場、市民の憩いの場となっている。
文と写真・佐々木香理
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