材料は「ヒト細胞」と「輸血用血液」
あるアーティストが、奇抜な方法で人工肉産業を批判し、議論を引き起こしている。 ヒト細胞から作られたステーキをロンドンのデザイン・ミュージアムに展示する企画は、動物の生きた細胞の使用が増加する食肉産業への批判を意図していた。結局、この企画は生命倫理に関する物議を醸し、芸術的な手法を用いたアプローチの思わぬ落とし穴となった。 ペンシルベニア大学のスチュアート・ワイツマン・デザイン大学院で美術の准教授を務めるオルカン・テルハンは2019年、気候変動がいかに将来の食糧消費に影響しうるかを推測していた。3Dプリンターで作られたパンケーキやバイオテクノロジーによって作られたパン、遺伝子組み換えのサーモンをつくるプロジェクトを実現すべく、テルハンは科学者たちとタッグを組んだ。 しかし、細胞培養から人工肉製品を開発することで拡大する細胞農業界の持続可能性やそのあり方に一石を投じたのは、彼らが「ウロボロス・ステーキ」と呼ぶ、挑発的で食欲を失くさせる「肉」だった。 この肉は、ヒト細胞と期限切れの輸血用血液から培養されて生まれたのだ。
カニバリズムを推奨しているわけではない!
10月にウロボロス・ステーキがデザイン・ミュージアムに移送されてから、このプロジェクトの動機をめぐってネット上で議論が白熱。テルハンは、「邪悪」だと罵る多くの脅迫メールやSNS上の中傷に見舞われた。 なかには作品の破棄を求めるメッセージもあった。ある記者に脅迫メールやツイートを提供したテルハンは、「議論はたちまち、私たちがカニバリズムを宣伝しているという非難に集中しました」と述べた。 テルハンは、「この非難は、人間が人間を食べることはタブーであるため、まったく間違った方向で政治問題化されてしまった誤解なのです」と付け加えた。 自らの尻尾を食べる蛇を描いた古代のシンボルにちなんで名づけられた「ウロボロス・ステーキ」は、世界中の食肉製品の需要の増加への諷刺として人間が自らの体を食べることを表現してはいるが、宣伝しているわけではない。 科学者たちは、食肉製品の需要増加が、二酸化炭素の排出や生物多様性の減少の一因になりかねないと危機感を抱いてきた。 ステーキのデザイナーたちは、そうした示唆とともに観客にショックを与えることが、環境に対する人間の責任の見直しと、クリーンな食肉産業へのきっかけになることを期待していた。 人工肉産業は、“食肉解体フリー”な食品を製造していると自称してきたが、実際にはほとんどの企業が、妊娠した雌牛を殺した際に摘出されるウシ胎児血清に依存して細胞培養を行なっているのだ。 「我々のプロジェクトは、深刻な問題に対してばかげた解決策を提案しているのです」 テルハン、および工業デザイナーのグレイス・ナイトと共同でステーキを創り出した生物物理学者アンドリュー・ペリングは語る。 「しかし我々のシナリオでは、自分の細胞を提供することで、人間は少なくとも同意を示したことになります。人工肉産業の世界では、動物の同意なしに彼らの細胞を搾取しているのですから」 プロジェクトをめぐる議論が白熱するにつれ、一口サイズの肉の塊がアメリカ中の美術館を旅して回るようになる。小生意気に皿に盛りつけられ、銀器とともに飾られている時ですら、昨年は何の問題も起きなかった。
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