ピーッ。笛の音を合図に、眼光鋭い1羽の猛鳥が飛び立つ。大きな翼を羽ばたかせ、用意された三つのフラフープをくぐり抜けると、ゴール地点にピタッ。優雅な一部始終を子どもたちが歓声と拍手でたたえた。
青森県津軽地方の
奈良さんは「
鷹匠の仕事は、保育所などでのパフォーマンスにとどまらない。市街地や倉庫にたむろするカラスやハトを追い払ったり、ゴルフ場でタカを飛ばし、好スコアを祈る「ホークインワン」というイベントを企画したり。CMやテレビ番組に出たのは一度や二度ではない。
想像していた鷹匠のイメージとはちょっと違う……? 奈良さんは笑う。「いやいや、タカは狩り以外にも色んなことができる。可能性は無限大です」
奈良さんは現代の「鷹匠」として、これまでにオオタカやハリスホークなどを7羽ほど育ててきた。
大人になり、タカの飼育を取り上げたテレビ番組をたまたま見た。「あんなに自由自在に扱えるのか。かっこいい」。出演していた男性に直接電話して「どうしても飼ってみたいんです」と頼み込み、オオタカを1羽譲ってもらった。
だが、タカを懐かせるのは至難の業。逃げようとするし、言うことも聞かない。男性と毎日連絡を取り、教えを請うた。自分の手を気に入ってもらえるように、拳の上で餌を食べさせたり、おわんを手に乗せて安定させたりする練習も繰り返した。試行錯誤しながら3か月かけて信頼関係を築いた。
指示を理解させるのも一苦労。餌を与えすぎると言うことを聞かない。かといって餌を与えないのはかわいそうだ。適度な空腹具合をつかむまで餌の量を微調整した。
「調教は忍耐。好きじゃないと続けられない」
奈良さんには、2014年から最近まで行動を共にしたハリスホークがいた。
名は「ロッシ」。大好きなオートバイレース界のレジェンド、バレンティーノ・ロッシから名付けた。「みんなから愛される英雄になってほしい、と」
おとなしい性格のロッシはすぐに奈良さんを受け入れ、3週間後には飛ばせるようになった。初陣は、お隣の弘前市の依頼で、公園で桜の花芽を食べる害鳥「ウソ」を追い払うこと。ロッシが翼を広げて舞うと、ウソは一目散に逃げた。空港やリンゴの倉庫でヒバリやハトを追い払い、市街地ではカラスを撃退。活躍が知られ、地域のイベントへの出演も相次いだ。
「ずっと一緒に」と思っていた昨年8月、悲劇が訪れる。豪雨で川から水があふれ、奈良さんは外出先から帰宅できなかった。ロッシをつなぐ家の止まり木は高さ1メートル30。水位はそれを上回っていた。突然の別れを悔やみきれず、思い出しては泣いた。
1か月後。ブリーダーから「ロッシが死ぬ3日前、同じ母親から弟が生まれていた」と連絡があった。生まれ変わりだと信じた。「ロッシのような愛されるタカに育てる」。目標が決まった。
からの記事と詳細 ( 現代の「鷹匠」物語…多才なタカ相棒にイベントなど多彩なお仕事 ... - 読売新聞オンライン )
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