ソフトバンクは5月6日、元社員が転職先の楽天モバイルに5G通信などに関する営業機密を持ち出した件を巡り、営業上の利益が侵害されたとして、同社と元社員に対して10億円の損害賠償などを求める民事訴訟を東京地方裁判所に提起したと発表した。ソフトバンクは約1000億円の損害賠請求権を主張し、実際の請求額は審理に応じて拡大するとしている。
訴訟では損害賠償に加え、持ち出された機密の廃棄や利用の停止などを求めている。ソフトバンクが発表した請求の内容は以下の3点。
- 楽天モバイルと元社員に対する損害賠償請求(不正競争防止法第4条)
- 持ち出された情報を基に、楽天モバイルが建設した基地局の使用差し止め請求(同法3条1項)と廃棄請求(同法3条2項)
- 元社員が持ち出したデータの使用・開示差し止め請求(同法3条1項)と廃棄請求(同法3条2項)
今回の機密持ち出しを巡っては、警視庁が1月12日にこの元社員を逮捕。ソフトバンクは楽天モバイルと元社員に対し、民事訴訟を提起する方針を明かしていた。同社は訴訟の提起に先立ち、2020年11月27日に楽天モバイルに対して証拠の保全を求める申し立てを、12月10日には持ち出された機密の利用停止を求める仮処分命令の申し立てを行っていたという。
元社員に対しては、資産の仮差押えを求める申し立てを21年1月15日に実施。2月8日には、持ち出された機密情報の利用停止などを求める仮処分命令の申し立てを行った。
ソフトバンクは、これらの手続きで証拠の保全を求めたデータが、楽天モバイルが業務で利用しているサーバに保存されており、他の社員にも開示された事実を確認したと主張している。訴訟を提起した目的については「楽天モバイルが不正な競争を通して利益を獲得し、ソフトバンクの利益を侵害したことや、不正に得た情報を基に建設された基地局などが存在することを明らかにする」と説明している。
楽天モバイルはこのデータについて、ソフトバンクや裁判所に提出後、全て廃棄したと主張している。
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