Monday, May 31, 2021

現代の子どもにはつま先が地面につかない「浮き指」が多い、山梨大が確認 - マイナビニュース

山梨大学は5月28日、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の山梨県内の参加者を対象に、子どもの足の「浮き指」の頻度と、立っている姿勢の安定性(静止立位安定性)との関係を調査した結果、2019年7月~2020年2月に実施した「エコチル調査8歳学童期総合健診」に参加した子ども(7~8歳)396人の浮き足頻度は96.7%と高い値であったと発表した。

同成果は、山梨大のエコチル調査甲信ユニットセンター(センター長:山縣然太朗 社会医学講座 教授)の研究チーム(研究担当者:藤巻太郎 整形外科講座 特任助教)によるもの。詳細は、米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。

人間の足の中でもつま先は、立つときの身体の安定性を保つために接地し、歩行時の負荷の分散など、健康的な日常生活を維持するために重要と考えられている。しかし、近年の生活様式や生活習慣の変化や、外遊びの頻度の低下などによって、子どものつま先の機能不全に関連して、立っているときにつま先が地面に接触せず、歩行中に体重がつま先に移動しない状態である「浮き指」が注目されるようになってきたという(研究チームによれば、医学的に正しくは「浮き趾」だが、今回は指と表記することにしたという)。

成人に関する報告では、浮き指により、重心が移動した際に支える力が低下し、静止立位安定性(立っているときの安定性)も低下することで転倒しやすくなったり、歩幅や歩行速度などにも影響を及ぼしたりするとされている。しかし、子どもの浮き指が身体に及ぼす影響、特に静止立位安定性への影響についてはよくわかっていなかったという。

そこで今回、2019年7月~2020年2月に山梨県のエコチル調査8歳学童期総合健診に参加した400人の子どものうち、静止立位安定性検査を受けた396人(男児180人・女児216人)を対象とした、浮き指の頻度と子どもの静止立位安定性との関係の調査が実施された。

エコチル調査では母体血や臍帯血、母乳などの生体試料が採取され、保存・分析されると同時に、参加する子どもが13歳になるまでの追跡調査が実施され(その後の5年間のデータ解析期間を含め、2032年度まで続く計画)、子どもの健康に影響を与える環境要因を明らかにすることを目的としている。

今回の調査は、平衡機能測定装置(win-pod)が用いられ、圧力の中心から重心動揺が計測され、足の指の圧力から浮き指スコアが算出された。浮き指の評価方法は、現在のところ標準的な方法が定まっていないため、今回はこれまでに報告された方法のうちの1つを参考としたとのことである。

浮き指スコアは、足の親指から小指までそれぞれの指における接地程度を点数化したもので、1つの指につき、完全接地を2点、不完全接地を1点、まったく接していないものを0点とし、両足のすべての指で20点満点で、18点以上を正常、17~11点を不完全接地、10点以下が浮き指とされている。

計測方法としては、装置の上に裸足で10cm程、両足を開いて正面を向き20秒間静止し、目を開けた状態2回と目を閉じた状態2回を測定し、値の小さい方が採用され、目を開けた状態における浮き指スコアの平均は男児3.7点、女児3.6点で、浮き指の頻度は全体では96.7%、男児95.6%、女児97.7%となったほか、目を閉じた状態の浮き指スコアは目を開けた状態よりも有意に大きくなることが確認されたという(目を閉じた状態の平均:男児4.9点、女児4.4点)。

また、立位の不安定性を示す総軌跡長とCOP面積も、目を閉じた状態の方が目を開いた状態よりも有意に大きかったとするほか、目を開けた状態と、閉じた状態ともに重心動揺と浮き指スコアとの間に有意に正の相関関係が示されたとする。

研究チームでは、今回の成果は、7~8歳児の浮き指の頻度が高いことが示されたと同時に、浮き指が子どもの立っている姿勢の安定性に直接関係していないことが示されたとしているほか、目を閉じて不安定になる状況では、つま先を地面に接触させ安定させようとすることが示唆されたとしており、少なくとも7~8歳児時点では、浮き指は高い頻度だが、姿勢の安定性とは直接的な関係がなく、病的な重要性はほぼないと考えられるとしている。

また、今回の研究では、浮き指と静止立位安定性の間の相互関係が調査されたが、浮き指スコアが高い(=浮き指ではない)場合に静止立位安定性が低い結果となり、浮き指と静止立位安定性の間に直接的な関係は示されなかったとしており、ほかにもさまざまな要因が複雑に関係していることが推測されるともしている。

なお、エコチル調査では、重心動揺検査のほかに本人と親の身体運動習慣、血液検査、体脂肪や筋肉量などの身体組成、パソコンを使った発達検査など、さまざまなデータの測定も実施されているため、研究チームでは、将来的には、これらのデータをより多面的に使用して、子どもの浮き指と姿勢の安定性のさらなる調査を行う予定としているほか、子どもが成長するにつれて浮き指の頻度は減少するのかといったことについても調査を行っていきたいとしている。

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