日が沈んだ直後の数十分間は、人や風景がもっとも美しく撮影できる「マジックアワー」と呼ばれる。淡い自然光が、魔法のようにドラマチックな画を演出するからだ。そんな夕暮れの薄明かりは、人々の幻想をかき立ててきた。日本では黄昏時の「逢魔時」に妖怪が出現するなど、ものごとを映し出すはずの光が、なぜか、別世界を連れてくる。
そして、人は光学技術の発展とともに、その方法を発展させていった。発明されたレンズは見世物小屋の妖怪を大写しにし、誕生したばかりのカメラは妖精の存在を信じさせた。最初の映画を見た人々は、スクリーンの汽車が観客席に来るとカン違いして逃げ出した。
「code name: WIZARD Episode 0」とは
現実の世界と魔法の世界を行き来する。実空間のデジタルエンターテイメントを提供するKAKUSIN(カクシン)は、それを最新テクノロジー「MR(Mixed Reality)」を駆使した謎解きアトラクション「code name: WIZARD Episode 0」によって実現させた。
空間拡張技術を使った新たなコンテンツを模索した同社により、「現実世界で魔法が使えたら」というコンセプトで生まれたのが「code name: WIZARD」。舞台やキャラクターは細かく設定されており、「Episode 9」までが計画されている。
MRとは、いま私たちが見ているこの現実に、高解像度の立体ホログラムを投影し、操作できるようにする技術。モニターを用意する必要はない。MRゴーグル越しに手をかざせば、枯れた花を咲かせることも、テーブルの上に魔方陣を描くことも、棚の中に隠れた妖精を捕まえることも可能になる。
「code name: WIZARD Episode 0」の参加者は、境界をまたぐ者「ストライダー」の見習いとなって、魔法世界の妖精たちと契約の儀式をおこなう。ゲームのキャラクターを操作するのではなく、自分自身が部屋を歩き、謎を解き、家具や小物を動かして、妖精達を見つけ出すのだ。
完全にCGの世界に囲まれるVRと違って、MRゴーグル越しに見えるのは現実と非現実の両方である。それが、これまでにない体験を生み出している。
非日常を体験できるMR
もう一つ、VRと違う点は、他の参加者も生身で同じ部屋にいて、同じものを見ているということだ。お互いにコミュニケーションをしながら、謎解きを楽しむことができる。
アトラクションの要となるMRゴーグルは、米Magic Leapが開発した"Magic Leap 1"。日本ではNTTドコモから販売されているデバイスだ。プロセッシングユニットを肩から提げる方式なため、ゴーグルが軽量化されており、装着も負担にならない。
「良い意味での"錯覚"を起こせたらスゴイ嬉しい」と、本プロジェクトを担当する、 Executive Directorの徳原大和氏は語る。
「日常の感覚を残しながら、非日常を体験できるのがMRです。アトラクションに参加した後も、『もしかしたら妖精はいるのかも……』と感じるような、そんな手触りをぜひ得てほしいと思います」
第一段の「Episode 0」は、トータルで20分ほどのMR体験となり、8月10日から開催予定だ。なお、詳細は「code name: WIZARD」クラウドファンディングページで確認できる。
筆者プロフィール: 瀬戸義章
1983年5月16日生まれ。神奈川県出身。物流会社で新規事業のマーケティングを担当後、フリーランスに。ITにより途上国の防災力を強化する国際支援活動も展開している。著書に『「ゴミ」を知れば経済が分かる』(PHP出版)
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July 27, 2020 at 12:17PM
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