滝川直広
兵庫県姫路市網干区にある臨済宗妙心寺派の尼寺・不徹寺が、近くの同派の寺にあった茶室を境内に再建するため、クラウドファンディング(CF)で費用を集めている。女性のための現代の「駆け込み寺」をつくりたいという松山照紀(しょうき)住職(59)。茶室で、悩みを抱える女性に落ち着きを取り戻す時間を過ごしてほしいと考えている。
茶室は戦前、龍門(りょうもん)寺に移築されたと言われる「不生庵(ふしょうあん)」。龍門寺では長く使われていなかったため、茶道の心得がある松山住職のいる不徹寺への移築話が持ち上がった。
昨年解体され、部材は不徹寺に移されたが、コロナ禍の影響などで今年は再建できず、ようやく来年、着手できる見通しになった。全体の費用は1500万円を見込み、まずは500万円を目標に1日からクラウドファンディングを始めた。期間は来年3月末まで。さらに2回実施して費用を集めたいという。
不徹寺は、「雪の朝二の字二の字の下駄(げた)のあと」の句で知られる江戸時代の女性俳人、田ステ女が創建したといい、5年前に寺に来た松山住職は、懐石料理教室や手芸の会を寺で開催しながら、女性からの様々な相談を受けてきた。
夫からの家庭内暴力に悩む女性がいた。同じ家で暮らすだけに逃げ場がなかった女性に、「いつでも、何時でもいいから、電話して寺にいらっしゃい」と言葉をかけた。夫からのモラルハラスメントで「気持ちが落ち込んで仕方がない」という別の女性には、「一人になれる場所を提供するから、昼寝でもすれば」と伝えた。
再建する不生庵は、女性たちが抱える苦しみを、茶事や瞑想(めいそう)、会話などを通してほどいていく場所にするつもりだ。松山住職は「茶室は4畳半と3畳のふた間。一人で落ち着いて考えるのに、いい広さだと思います」と話している。
返礼品などの詳細はクラウドファンディングのページ(https://kobe.en-jine.com/projects/cha-shitsu)で。(滝川直広)
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