
来年度実施の新学習指導要領に基づく高校の国語教科書では、論理的な文章と実用的な文章が重視され、特に一年生向けの必修科目「現代の国語」では小説などのフィクションが排除されることになった。それが三年前のこと。国語の教科書から文学作品が消えることに各方面から反発の声が上がったことは記憶に新しい。そして今年、各社の新教科書は文科省の検定を受け、今夏一斉に各学校で採択の選定が進んでいる。ところが、そこで奇怪なことが起きた。
各社教科書の中で、トップシェアを誇る第一学習社だけが、従来と同じように芥川龍之介の「羅生門」をはじめ小説作品を複数収録しており、しかも検定に合格したのである。これまで文科省は「『現代の国語』はノンフィクションの科目であり、小説が入る余地はない」と力説してきたはずだ。それに公然と逆らったのに合格したわけで、これまでどおり小説を教えたい現場の採択が従来以上に同社に集中するのは必定だろう。大胆な作戦勝ちとも言えるが、同社は小説を載せても大丈夫という確証をどこから得たのだろうか。激怒した他社は質問状を文科省に寄せたが、「羅生門」の最後に下人が覗(のぞ)く「黒洞々たる闇」がつい想起さ...
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