Sunday, October 31, 2021

現代の「蟹工船」からの技術者解放を国策に、文系技術者の再教育も必須だぞ - ITpro

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 前回の「極言暴論」をお楽しみいただけただろうか。「お楽しみいただけたか」と妙な言い方をしたのは訳がある。2015年の段階で「SIerは5年で死滅する」と予測して赤っ恥をかいたことを、あえて記事に盛り込むことで、多くの人に「木村ってばかだな」と笑いながら読み進めてもらうことを狙ったからだ。そしてもう一度、人月商売のIT業界の現実を直視することで、技術者らにこれからの身のふり方を考えてもらいたかったのだ。

 で、あの記事を読んでみた感想はいかがか。「またオオカミおやじがいいかげんなことを言っているぞ」と思ったのなら、率直な感想で大変よろしい。だが、人月商売のIT業界やユーザー企業の現状に思いをはせた読者なら、別の感想も抱いたはずだ。「5年で死滅するかはともかく、人月商売を続ける限りSIerや下請けITベンダーに先がないのは確かだ」。そうなのだ。ユーザー企業の丸投げ体質によって我が世の春を謳歌してきたIT業界にも、冬の時代が訪れつつあることを認識できただろう。

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 シニアの人ならよくご存じだと思うが、実は「人月商売を続けている限りITベンダーに先はない」は大昔から言われ続けてきたことだ。私も1990年代の前半にその件で取材して回った記憶がある。だが、先はあった。いくらでもあったのだ。独自仕様のシステムにこだわるくせに、開発はITベンダーに丸投げするという愚かなユーザー企業の存在が、人月商売を生き永らえさせてきたのだ。だから、5年前に「SIerは死滅する」と書いたときの反応は「そんなの以前から言われてきたこと」といった類いのものばかりだった。

 「そんなの以前から言われてきたこと」とのコメントは大概、次のように続く。「だけど何も変わらなかった。だからこれからも変わらない」。さて、今はどうか。エゴサーチをしてみても、その手の類いのコメントはあまり見られない。むしろ「システム開発における人月商売は急激に減っていくと思う」といったコメントが大幅に増えた。大変残念なことに記事を最後まで読んでくれなかったらしく、「死滅するわけはない。ITベンダーの役割が変わるだけ」といった、記事の論旨に似たコメントもあった。

 いずれにせよ、技術者をはじめ人月商売のIT業界の関係者もようやく潮目の変化を実感しつつあるようだ。いまだに「これからも変わるわけがない」とかたくなに思い込んでいる人たちは、人月商売の泥船と共に海のもくずになってもらうしかないが、「このままじゃ、やばい」との危機感を持つならば、誰もがより良い未来を求めて動き出せばよい。まさにその動きが前回の記事で指摘した「下請けITベンダーからユーザー企業への技術者大移動」である。

 そこで今回の記事では、暴論の木村とは思えないような「政策」を提言してみたい。ただし何も小難しい話ではない。要は技術者大移動を促進するためリカレント教育(学び直し)の機会の提供などに乗り出せばよいのだ。これは効果があるぞ。そう言えば、以前の極言暴論で、日本では大多数を占める「文系技術者」のリカレント教育の必要性を述べたので、その観点も含め提言してみよう。技術者の新たなキャリアを開くことで、技術者不足が大幅に解消し、人売り業のITベンダーも滅びに向かう。これは国のためにもなるぞ。

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