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前回の「極言暴論」をお楽しみいただけただろうか。「お楽しみいただけたか」と妙な言い方をしたのは訳がある。2015年の段階で「SIerは5年で死滅する」と予測して赤っ恥をかいたことを、あえて記事に盛り込むことで、多くの人に「木村ってばかだな」と笑いながら読み進めてもらうことを狙ったからだ。そしてもう一度、人月商売のIT業界の現実を直視することで、技術者らにこれからの身のふり方を考えてもらいたかったのだ。
で、あの記事を読んでみた感想はいかがか。「またオオカミおやじがいいかげんなことを言っているぞ」と思ったのなら、率直な感想で大変よろしい。だが、人月商売のIT業界やユーザー企業の現状に思いをはせた読者なら、別の感想も抱いたはずだ。「5年で死滅するかはともかく、人月商売を続ける限りSIerや下請けITベンダーに先がないのは確かだ」。そうなのだ。ユーザー企業の丸投げ体質によって我が世の春を謳歌してきたIT業界にも、冬の時代が訪れつつあることを認識できただろう。
関連記事 改訂「SIerは5年で死滅する」、下請けからユーザー企業への技術者大移動が始まるシニアの人ならよくご存じだと思うが、実は「人月商売を続けている限りITベンダーに先はない」は大昔から言われ続けてきたことだ。私も1990年代の前半にその件で取材して回った記憶がある。だが、先はあった。いくらでもあったのだ。独自仕様のシステムにこだわるくせに、開発はITベンダーに丸投げするという愚かなユーザー企業の存在が、人月商売を生き永らえさせてきたのだ。だから、5年前に「SIerは死滅する」と書いたときの反応は「そんなの以前から言われてきたこと」といった類いのものばかりだった。
「そんなの以前から言われてきたこと」とのコメントは大概、次のように続く。「だけど何も変わらなかった。だからこれからも変わらない」。さて、今はどうか。エゴサーチをしてみても、その手の類いのコメントはあまり見られない。むしろ「システム開発における人月商売は急激に減っていくと思う」といったコメントが大幅に増えた。大変残念なことに記事を最後まで読んでくれなかったらしく、「死滅するわけはない。ITベンダーの役割が変わるだけ」といった、記事の論旨に似たコメントもあった。
いずれにせよ、技術者をはじめ人月商売のIT業界の関係者もようやく潮目の変化を実感しつつあるようだ。いまだに「これからも変わるわけがない」とかたくなに思い込んでいる人たちは、人月商売の泥船と共に海のもくずになってもらうしかないが、「このままじゃ、やばい」との危機感を持つならば、誰もがより良い未来を求めて動き出せばよい。まさにその動きが前回の記事で指摘した「下請けITベンダーからユーザー企業への技術者大移動」である。
そこで今回の記事では、暴論の木村とは思えないような「政策」を提言してみたい。ただし何も小難しい話ではない。要は技術者大移動を促進するためリカレント教育(学び直し)の機会の提供などに乗り出せばよいのだ。これは効果があるぞ。そう言えば、以前の極言暴論で、日本では大多数を占める「文系技術者」のリカレント教育の必要性を述べたので、その観点も含め提言してみよう。技術者の新たなキャリアを開くことで、技術者不足が大幅に解消し、人売り業のITベンダーも滅びに向かう。これは国のためにもなるぞ。
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