東京・新宿の劇場で起きた集団感染は、観客や出演者、スタッフら計850人が濃厚接触者になり、感染者も日ごとに増え全国に広がっている。主催者側は一定の感染防止策をとっていたとするが、あらためて屋内でのイベント対策の難しさを浮き彫りにした。関係者からは「劇場全てが危ないと思われたくない」との声も上がっている。(奥野斐)
■まずいと思わず
「観客は皆マスクをして入り口で消毒し、検温もあった。換気もしていたし、劇場では『これはまずいな』とは思わなかった」
今月初め、この舞台を見た東京都の30代の女性会社員は話す。女性は後方の席で、集団感染が発覚後、熱っぽいと感じてPCR検査を受けたが、結果は陰性だった。
舞台は、6月30日から7月5日に劇場「新宿シアターモリエール」で上演された「THE★JINRO イケメン人狼アイドルは誰だ!!」。主催のイベント会社「ライズコミュニケーション」のウェブサイトによると、全12公演で感染者が発生し、15日までに出演者17人、スタッフ8人、観客34人の計59人の感染が分かった。
出演した俳優山本裕典さん、原案を担当した映画コメンテーター有村昆さんらも陽性反応が出たことを公表。感染者は東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、茨城で確認、ほかに愛知、島根、長野でも確認された。
主催者側は、業界のガイドラインに沿って観客やスタッフのマスク着用などを実施。観劇した女性によると、開演前や休憩中は換気し、席の間隔も1席分ずつ空けて、定員186人の半分程度だった。公演中に出演者2人が体調不良を訴えたが、ライズ社によると抗体検査で陰性だったことや検温結果が規定内だったため、出演を続行した。
■触れ合いあり?
しかし、14日には西村康稔経済再生担当相が記者会見で「(出演者が)観客と握手やハグをしていたと聞いている」と発言。萩生田光一文部科学相も「ガイドラインを逸脱していたのではないか」と指摘するなど波紋が広がっている。
こうした舞台では、コロナ以前は握手会などが行われるなど出演者と観客の距離が近い。「イケメン評論家」で、イベントの主催もする沖直実さんは「舞台俳優はファンあっての仕事。求められたら応じてしまう気持ちも分かるだけに対応が難しい。実際どの程度の触れ合いがあったのかを検証し、対策を徹底しないといけない」と指摘する。
都は13日に劇場側から聞き取り。ガイドラインには来場者と接触するような演出を避けるなどの記載があり、その順守状況や最前列の観客に配られたフェースシールドが装着されていたかなどを確認中だが、「主催者の社員の多くが出社しておらず、電話がつながりにくい」(都担当者)。主催者側に再発防止策の提出を求め、提出がなければ休業要請の検討もする。
■観客も自覚が必要
同劇場が加盟する小劇場協議会も独自の感染防止ガイドラインを作成。本紙の取材にメールで「ガイドラインを順守していたのかどうかを明らかにした上で、何が足りなかったのかを考えるべきだと思う。小劇場はダメと全体論にすり替えられてしまうことは悲しい」と回答した。
観劇した女性は、アクションやダンスが盛り込まれたライズ社の作品が好きで、数年前から観劇しているという。「役者たちは真剣に作品に向き合っている。こうした舞台をなくさないでほしい」と話した。
ガイドラインを作成した全国公立文化施設協会(東京都中央区)の岸正人事務局次長は「劇場や主催者はもちろん、出演者や観客の自覚も問われる。今後は代役の用意など感染者が出た場合での公演の維持策も考えなくては」と話し、指針の見直しも考えるという。
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2020-07-15 21:00:00Z
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