「好きな人に好きと言えることは最高。そんな世の中になってほしい」--。日本最古の歴史を持つ劇場で、関西の歌舞伎公演の拠点の一つ、京都・南座(京都市東山区)に7月1日、そんな言葉が響き渡った。
女性カップルの結婚式を兼ね、性的少数者(LGBTQなど)への理解の輪を広げようと開かれた「レインボーフェスin南座」の終演あいさつ。舞台上の藤川美帆さん(46)と西村和子さん(54)は約500人の観客に叫んだ。当たり前に聞こえるが、性的少数者にとっては容易ではない。そんな環境を知ってほしいとの願いを込めた。
きっかけは2020年、2人で南座で観劇したこと。花吹雪が舞うきらびやかな舞台は地下アイドルとして活動する藤川さんにとって夢の舞台だ。「南座で結婚式を挙げたい」。SNS(ネット交流サービス)への投稿がイベント運営会社の担当者の目にとまり、連絡が来た。南座は個人の結婚式への舞台貸し出しができないため、LGBTQがテーマのイベントとして企画した。
二人が住む京都市は同年9月、性的少数者の成人カップルをパートナーとして公的に証明し、社会参加の促進を目指す「パートナーシップ宣誓制度」を開始。藤川さんと西村さんも直後に宣誓し、宣誓書受領証を受け取った。
市は柔軟な対応を求めるため、不動産関連の団体などへ周知を行っているが、藤川さんは賃貸住宅の契約時、婚姻関係か血縁のある人物の記載を求められ、宣誓書受領証を提出しても理解を得られなかったという。そうした経験から、性的少数者について広く知ってもらい、当事者には「LGBTQは隠すことではないんだよ」と伝えたいと思うようになった。
イベントで二人は普段、俳優にだけ許されている花道を歩き舞台へ。多様性を示す7色のブレスレットを手首に巻いた二人に向け、「結婚」に賛同する大きな拍手が送られた。DJらが奏でるアップテンポな音楽に合わせ、思い思いの衣装に身を包んだ参加者と二人が花道などを歩くレインボーパレードも行われた。
6月23日、性的少数者への理解増進法が施行された。内容には賛否があるが、「権利のために闘うことはしない」と二人は言う。願いは「(LGBTQも)『背が高い』『背が低い』などと同様、一つの好みとして当たり前になること」。
もちろん、権利も、そのために闘うことも必要だが、他にも方法はある。イベントもその一つ。互いの主張を認め、協力し合う。闘う人たちを尊重しながら、「北風ではなく、私たちは私たちらしく太陽で」。
イベント終了後、西村さんは「性別は関係なく、大事な人と一緒にいられることがすてきなことだと感じてもらえたのではないか」と振り返った。自分らしさを大切に、これからも二人で幸せを紡いでいくつもりだ。【山崎一輝】
からの記事と詳細 ( eye:自分らしく2人の花道 京都・南座で女性カップルの「結婚式」 - 毎日新聞 )
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