2023年6月26日、沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(商品名バクニュバンス水性懸濁注シリンジ)の小児への適応と用法用量が追加された。追加された適応は「小児における肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F)による侵襲性感染症の予防」、用法用量は「小児において、初回免疫として1回0.5mLずつ3回、いずれも27日間以上の間隔で皮下または筋肉内に注射。追加免疫として1回0.5mLを1回、皮下または筋肉内に注射。ただし、3回目接種から60日間以上の間隔をおく」となっている。
肺炎球菌は、肺炎球菌莢膜ポリサッカライド(PnPs)の抗原性により90種類以上の血清型に分類されるグラム陽性球菌で、主要な呼吸器病原菌の1つである。同菌が髄液や血液中に侵入した場合には、敗血症や髄膜炎などの侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を引き起こす。IPDおよび肺炎球菌性肺炎を含む肺炎球菌性疾患は、予防を目的としたワクチンが使用されているが、小児、高齢者、基礎疾患(慢性肺疾患、慢性肝疾患、慢性心疾患、慢性腎疾患、糖尿病など)を有する者、および免疫不全の状態にある者における疾病負担は依然として大きい。
小児に対して日本では、13血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23F)のPnPsと、キャリア蛋白質(CRM197)との結合体(PnPs-CRM197)を含む13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13、商品名プレベナー13)、肺炎球菌による重篤な疾患に罹患するリスクが高い小児(2歳以上)に対する23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPSV23、商品名ニューモバックスNP)が臨床使用されている。また、予防接種法において、PCV13は2013年11月より小児に対して定期接種、PPSV23は2014年10月より高齢者に対して定期接種が実施されている。
PCV13による小児の定期接種が実施されたことで、ワクチンに含まれる血清型由来のIPDは減少したものの、一方で小児のIPD罹患率は依然として減少していないことも重大な公衆衛生上の問題となっていた。このことに関して近年、海外では5歳未満の小児IPDの原因となる主要な血清型が22Fおよび33Fであると報告されている。
バクニュバンスは、PCV13に含まれる血清型に加え、新たに2種類の血清型(22Fおよび33F)の抗原を含むPnPs-CRM197結合体を有効成分とする沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)である。同薬は、2022年9月に成人に対する適応で承認されていた。バクニュバンスは、15種類それぞれの血清型PnPsと結合したCRM197を含んでおり、肺炎球菌のオプソニン化、貧食および殺菌を促進する抗体を誘導して肺炎球菌による疾患を予防する。また、同ワクチンはT細胞依存性免疫応答を誘導する。キャリア蛋白質特異的ヘルパーT細胞は、血清型特異的B細胞の親和性成熟や記憶B細胞の誘導に寄与する。
小児を対象とした国内第III相試験(033試験)、海外第III相試験(024試験および029試験)などにおいて同ワクチンの有効性および安全性が確認された。海外では、2023年1月現在、欧米など世界30以上の国または地域で小児に対する適応を取得している。
副反応として、2歳未満では注射部位紅斑(66.2%)、注射部位硬結(60.9%)、易刺激性(56.4%)、38℃以上の発熱(55.6%)、注射部位腫脹(50.9%)、2歳以上では注射部位疼痛(60.9%)などが報告された。重大なものとして、痙攣(熱性痙攣を含む、0.3%)、ショック、アナフィラキシーの可能性があるので、十分注意する必要がある。
小児に対して同ワクチンを使用する場合、下記の事項について留意しておかなければならない。
●現時点で予防接種法に基づく「定期接種」対象のワクチンではない
●接種は生後2カ月以上18歳未満の間にある者に行うこと。また、詳細な接種対象者・接種時期に関しては添付文書「用法及び用量に関連する注意」の項を参照すること
●接種スケジュールの中で、PCV13により接種を開始後、途中でPCV15による接種に切り換える場合は、残りの接種をPCV15にすること
●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「重度のアレルギー反応(ショック、アナフィラキシーなど)」「早産児における無呼吸」「痙攣(熱性痙攣を含む)」「血小板減少性紫斑病」が挙げられている
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