3月23日、オーストラリアのモリソン首相は議会の演説で、「2020年は私たちの人生で最も過酷な1年となるだろう」と外出自粛などについて国民に理解を求めた。オーストラリアの感染者数はここ数日急増していて、3月26日現在2799人。1日400人前後増え続け、「感染爆発」が心配されている。
非常事態宣言で厳しい警戒態勢
オーストラリアは3月18日に非常事態を宣言。現在、パブやバー、レストラン(持ち帰りと宅配は除く)、娯楽施設、それに美術館や図書館などは閉鎖されている。また、病院では緊急でない手術が延期されているほか、グループでの活動は避け、個人の家への訪問も最小限に抑えるよう要請されている。
例えば、結婚式は5人以下とし、いわゆるソーシャル・ディスタンシング=社会的距離をとるルールを守るよう求められている。さらに、外国人は入国禁止、オーストラリア人は出国禁止の措置が取られている。日本と比べ、非常に厳しい警戒態勢が続いている。
感染拡大の原因はクルーズ船
感染拡大の原因の1つとして考えられているのが、クルーズ船「ルビー・プリンセス」。「ルビー・プリンセス」は横浜港で700人以上の感染者を出した「ダイヤモンド・プリンセス」と同じ会社が運航している。
ニュージーランドの観光クルーズを途中で切り上げて、シドニーに入港し、乗客およそ2700人が全員下船した。しかし、その後、乗客・乗員133人の感染が確認され、このうち1人が死亡した。最初の感染が確認されたのは、乗客全員が下船し、バスや列車など公共交通機関を使って帰路についた後だった。
クルーズ船は3月9日にシドニーを出発した。ニュージーランドで運航していたが、ニュージーランド政府の「クルーズ船入港禁止」の措置などにより、3月19日にシドニーに戻って来た。大都市シドニーを管轄するニューサウスウェールズ州政府は、ニュージーランドの感染者数が少なかったことなどから、このクルーズ船を「低リスク」と判断。発熱などの症状がある乗客13人が隔離され、新型コロナウイルスの検査を進めた一方で、乗客全員の下船を許可した。その直後、3人の感染が発覚し、さらに3月24日までに乗客・乗員133人の感染が確認された。
州政府は乗客の追跡調査を進め、14日間の自主隔離を求めている。オーストラリア政府もこのクルーズ船が感染拡大の原因の1つとして挙げていて、州政府の対応などに批判が集まっている。オーストラリアでは、さらなる感染拡大による医療崩壊も心配されている。
教訓は生かされず
換気の悪い空間で、大勢の人が集まるクルーズ船の感染拡大の深刻さは、「ダイヤモンド・プリンセス」で学んだ教訓だ。首相が非常事態宣言を出した直後の入港であり、乗客の陰性確認後に下船させるといった対応がなされるべきで、油断していたと言わざるを得ない。今後、政府が進める厳戒態勢によって、感染の拡大が収まっていくことが望まれる。
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March 26, 2020 at 05:15PM
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