東京藝術大学(以下、東京藝大)および同大学院の先端芸術表現科をともに首席で卒業したアーティストの西澤知美。“現代の美容のあり方”をテーマに、メイク道具と医療器具を融合させて、メイク室を手術室へと変化させた空間インスタレーション「Natural Make Up」や、ビューラーと鉗子(かんし)を融合させた巨大彫刻作品などの作品などを制作している。なぜ美容をテーマにしようと思ったのか。彼女が制作の場としているアトリエで話を聞いた。
WWD:西澤さんは“美容”をテーマに創作を行っていますが、どういった経緯でそうなったんですか?
西澤知美(以下、西澤):もともと“物の表面性”みたいなことに興味がありました。それでメイクやスキンケアで顔の毛穴やシワなどの凹凸をなくして滑らかに見せることって、「立体的なものを平面的に見せていく作業」と捉えるとおもしろいなと思ったんです。あと、最近は化粧品が進化したことでシワやシミを消せるなど、医療との境界がなくなってきていて、化粧品を使うことがある種の医療行為にもなっている。そう考えると毎日化粧品を使うことって、肌の表面をきれいにするだけではなく、肌そのものを構築していることになる。それにすごく引かれて、肌の表面と内部との境界、美容と医療の境界を意識して作品を作るようになりました。ただ明確にこんな作品を作りたいというよりは、作っていくなかで、だんだんとこういったものが作りたかったんだと自分でも分かってくるんです。だから作品を作ることって、自分自身を知ることにつながっているんだと思います。
WWD:西澤さんご自身は美容には興味があったんですか?
西澤:興味はあったんですが、自分でしっかりとメイクをやるかというとそこまでではなかったです。ただ同世代の女性がすごく美容に対する追求心が強くて、それを客観的に見ていた感じです。新しい成分も出てきていて、いろいろな化粧品を使ってみたいという興味はあるんですが、今は化粧品買うなら制作費にしようという考えになってしまっています(笑)。
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March 29, 2020 at 10:00AM
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