3月18日発売のアルバム『つらなってODORIVA』収録曲「7」がMBS/TBSドラマイズム『死にたい夜にかぎって』オープニング主題歌に起用されているましのみ。同曲が毎話切なさにつつまれるドラマの雰囲気を盛り立ててきた。
『死にたい夜にかぎって』は、「君の笑った顔、虫の裏側に似てるよね。カナブンとかの裏側みたい」――憧れのクラスメイトにそう指摘され、この日を境にうまく笑えなくなった、という著者・爪切男本人の実体験に基づくストーリー。様々な女性たちに翻弄され、「ろくでもない人生」を送りつつも、「まあいいか」と言えてしまう、愛とユーモアのある男が主人公だ。
「7」はまさに〈ろくでもない僕でさ〉という歌詞で始まり、ドラマの主人公の胸の内を歌ったような楽曲。この曲は、他人にどう思われても二人の世界は温かいということをよく表現しており、この点でも物語とリンクしている。人によっては「最悪」と言われかねない人生を「最愛」とする姿勢を、見上げるだけでそこにある〈僕らの闇を照らすミラーボール〉と表現しているところが、個人的に好きだ。闇を照らす満天の星ではなく、ミラーボール。あたり一面を広く照らすものではないけれど、僕らを笑顔にしてくれる光に、この歌の主人公、ひいてはましのみは気づく力があるのだと思う。
中野舞子監督によるドラマ仕立てのMVも、楽曲の世界観を広げてくれる。二人の登場人物の何気ない日々のカットに想いを馳せながら、歌詞を堪能するのも良いだろう。後半、ミラーボールのような色とりどりの光が、二人に当たるシーンも美しい。
ましのみといえば、これまでエレクトロサウンドやチップチューンを取り入れ、声のキーも高く可愛らしい印象の楽曲が多かった。しかし今回はゆったりと低いトーンで歌い上げられ、これまでとは異なるシンガーとしての魅力が一層引き出されている。
また、同曲にはましのみというアーティスト個人の「欲」のようなものが、良い意味で感じられない。他者の幸せに対する願いがあるように感じるのだ。実際、タイトルの「7」の由来は「“ろくでもない”我々に幸がありますようにとラッキーセブンの「7」」なのだという。ましのみは以前インタビューで、デビューからの2年間は「「世間という怪物に対して、いかに突き刺すか?」ということを考えながら音楽を作っていた」(参照:CINRA)と話していた。ましのみはそういったフェーズを抜け、自分ではない誰かの生活のための音楽を、自信を持って作れるようになっているのだと、本作から感じた。
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March 31, 2020 at 09:17PM
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ましのみの楽曲が現代の若者の心に響く理由 『死にたい夜にかぎって』OP主題歌を機に考察 - Real Sound
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