TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは、炎上問題に詳しい弁護士の唐澤貴洋さんを交えて、“ネット炎上との向き合い方”について議論しました。
◆炎上はもはや誰にでも起こり得る
SNSなどの投稿に対して批判が殺到する“炎上”。これは著名人や企業による投稿に対して起きるものと思われがちですが、民間研究機関が行った調査によると、最近は一般利用者の投稿が炎上するケースが増加中。何気ない投稿を機に批判を集め、場合によっては住所や職場などが特定される恐ろしい事態につながることもあります。
近年の事例としては、2023年1月、回転寿司チェーン「スシロー」で醤油差しに口をつけるなどの迷惑行為を行う様子がSNSに投稿され批判殺到により炎上。2019年には女子高校生がアルバイトをして貯めたお金で自動車を購入した旨を投稿したところ、祝福や応援の一方で「高校生が車を持つなんて贅沢」、「勉強しろ」など、批判的なコメントが集中。その後、投稿者はアカウントを削除しています。
炎上してしまった場合、その加担者への対応を唐澤弁護士に聞いてみると、その手段は3つ。まずは「発信者情報の開示」。これは投稿・発信者が誰なのか、裁判手続きを利用して特定していくことで、もうひとつは「削除請求」。社会的な影響などを鑑み、サイト管理者やプラットフォーマーに当該投稿や記事などを削除してもらうことです。そして、発信者の特定が終えた段階で行う「損害賠償請求」があります。
ただ、発信者を特定できないケースもあり、「発信者情報の開示」を行うにしても裁判手続きが必要なため弁護士を頼むための費用がかかります。そのため、「コストに見合わない結果になる可能性もあるので、現状では被害者にとってはそれなりにハードルがある」と唐澤弁護士。
これに対しライターのヨッピーさんは、「炎上といっても殺到するのが批判と誹謗中傷では別物だと思うし、批判の場合には法的な手続きが、取りようがない。でも、誹謗中傷は赤字覚悟でやる気・気合いさえあれば特定はできると思う」と率直な感想を述べます。
臨床心理士のみたらし加奈さんは、「誹謗中傷している人のなかには、1人に対して粘着する人もいるが、意外と大勢の人を誹謗中傷しているケースがあるので、(そうした人が集まって)集団訴訟という手段もある」と言います。
キャスターの堀潤が誹謗中傷における昨今の警察の対応に関心を寄せると、唐澤弁護士は「10年前に比べれば良くなっていると思う。(ネット上の問題だけを)対応する部署ができたりしている」と言いつつ、「とはいえ、ひとつの記事だけを刑事事件として直ちに対応してもらうのは、難しい」とも。
番組SNSには「被害者の負担が大きすぎる。普通に運営会社が管理すべきこと。一日も早く純国産SNSを作って」という意見が寄せられていましたが、プラットフォーマーが外資系企業というのも問題を複雑化させている要因のひとつ。
唐澤弁護士は、「究極的には、日本で事業をやめても生きていくことができる海外企業に対し、ちゃんとした圧力を持てるかどうか。国の行政官庁である総務省がしっかりしない限りは難しい」と現状を解説します。
◆“炎上”など名前を与えることによる弊害も!?
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター山口真一准教授の研究資料によると、炎上対象となる事象は大きく5つに分類されるとか。まずは「反社会的行為や規則・規範に反した行為」で、これはスシローでの迷惑動画などがあたります。そして、批判・暴言、デリカシーをかいた発言など「特定の層を不快にさせる言動」。その他、「自作自演やステマ、ねつ造の露呈」、スキャンダルなどによる「ファンを刺激」、事件や事故の犯人など「他者と誤解される」の5つです。
「反社会的行為や規則・規範に反した行為」を巡っては、昨今「不謹慎狩り」なる行為も増えています。これは、寄付を公表した人に「わざわざSNSに投稿する必要があるのか」「売名行為だ」などと批判したり、被災地に支援に行ったという人に対して「現場を混乱させるだろう」と批判するなど善意を否定する書き込みをすることです。
こうした状況に対し、みたらしさんは「“炎上”や“不謹慎狩り”と名前を与えることで加害行為を肯定してしまう側面もある」と指摘。「名前をつけることでわかりやすく、周知されるが、一方でその行為自体が矮小化されてしまう現実があることはわかっておいたほうがいい」と注意を促すと、エッセイストの小島慶子さんは「“炎上”という言葉からは“良くないことがあるに違いない”という印象を与えるので、話題になっていることに対し、すぐに“炎上”とラベリングするのはやめたほうがいい」と付け加えます。
炎上に関して街頭で話を聞いてみると、「よく見かけるが、こんなことで批判がくるとは……と思う」(10代男性)、「毎日は見ないがたまに見る」(30代女性)、「Xのトレンドに上がっているものは、どうしても気になる」(40代男性)、「Xでは日常茶飯事だと感じる」(40代女性)、「はたから見ていて面白い、楽しみ」(20代男性)、「気になって見に行ってしまうし、まとめ記事なども見てしまう」(20代男性)などさまざまな意見がありましたが、結果として「気になる・見てしまう」という意見が多数。ネット炎上が「エンタメ化」しつつある現状が伺えます。
そうなると、例えば、Xは投稿のインプレッションによって収益が分配されるため、炎上を使ったお金儲けも容易に考えられます。ゆえに唐澤弁護士は「(プラットフォーマー側は)企業として明確なモラル、基準を設けるべき。テレビであれば放送法などの規制があるが、現状ネットはそうしたものがない。類似したルールを作るべき」と危機感をあらわに。
ちなみに、炎上に加担している人の傾向に関して、前述の山口准教授の資料によると、一般社員よりも主任・係長クラス以上の役職に就いた立場のある人のほうが若干多く、加担者のなかにはモラルや批評関連の投稿に対して、正義感で動くケースが多いとか。また、自分が気に入らない発言に対し、この人は自分より劣っていると感じて批判したり、自分の意見の支持者がネット上に存在することで正義感が満たされ、より過激・過剰になってしまうこともあるそうです。
◆自由に表現・発信ができる場所にするためには?
最後に今回の議論を踏まえて、「ネットを誰もが表現や発信をしやすい場所にするための手段」について、アイデアを出し合います。
みたらしさんが挙げたのは、“炎上を解体する / 言葉に力を持たせない / 脳への悪影響?”の3つ。
炎上の解体については、「私は、公益性が高い発言に対しての誹謗中傷は炎上ではないと思う。炎上としてしまうことで言葉に力を持たせてしまい、加害性を矮小化してしまうところがある」と指摘。そして、言葉の力に関しては「(炎上を)気にしないというのは無理。ただ、力を持たせないようにすることはできる。批判・誹謗中傷されているところを見なければ力は持たないし、持たせないことが重要」とみたらしさん。そして、脳についてはノルアドレナリンの影響、さらには「自分が暴言を吐くことによって自分の脳が傷ついてしまう」と危惧します。
一方、ヨッピーさんは「批判は仕方がないことだと思う。発言の自由もあるので。ただ、誹謗中傷は法律的にもダメなことで、プラットフォーマー側が対応すれば済む話」とプラットフォーマーの責任を追求します。
唐澤弁護士は「匿名性が人間を凶暴にさせている面があると思う」とし、“確実に特定できるようにすること”を求めます。
小島さんも同様に“ルール作り”を切望。「人が生きる場所であり、命に関わることになりかねないので。安全に利用できるよう厳しいルール作りが必要」と力を込めます。
堀は「これは安全保障上、大きな問題。あたかもその国に問題が起きていることを演出しようと思ったらいくらでもできてしまう」と懸念し、「人権・表現の自由も鑑みながら、ひとつの防衛策としてプラットフォーマーの責任は追求するべき」と話していました。
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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag
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