
幕末に京都で起きた新選組の内部抗争「油小路の変」を題材に、京都芸術大の学生らが映画のプロとタッグを組んで、映画「CHAIN/チェイン」(113分)を完成させた。現代の京都の風景を取り入れた斬新な演出が特徴。「時代劇だが、他人事(ひとごと)にしてほしくない」との思いが込められている。
油小路の変は、1867年11月、いまの京都市下京区七条油小路で起きた。新選組隊士らが、新選組を離脱した伊東甲子太郎(かしたろう)を暗殺し、遺体を七条油小路に放置。現場に駆けつけた伊東の仲間たちも殺害したとされる。
映画は、架空の人物である会津藩の脱藩浪士が抗争を目撃する視点で展開する。浪士を演じるのは俳優の上川周作さん。京都タワーや三条大橋など、現代の京都の街並みが背景に映し出されるユニークな仕掛けも特徴だ。実際に事件が起きた現代の七条油小路の路上でも撮影した。
タイトルには三つの意味が込められている。幕末から現代への時間軸の「連鎖」。社会的格差や規範など人々を「縛るもの」。そして、時空を超えて、お互いに理解しようと「つながる」という希望だ。
監督で、京都芸術大の福岡芳穂教授は「幕末に生きていた人たちが、現代の私たちのすぐ隣にいると感じてほしい」と語る。
映画制作には、京都芸術大映画学科の学生約200人が有志で参加した。制作した「北白川派」は、学生有志がプロと一緒に映画制作・公開を目指すため2009年に始まったプロジェクトで、本作が第8弾だ。「5万回斬られた男」と呼ばれ、今年1月に亡くなった俳優・福本清三さんも出演し、東映京都撮影所なども撮影に協力した。
演出担当の3年、中川鞠子さんは、当時の金銭感覚や食べ物、服装など画面に映るものを具体的に調べたという。手のしびれが止まらない設定の侍のためには、京都大医学部の学生に、科学的に正しい傷の角度や深さを聞いた。中川さんは「歴史の中の個々人がどう過ごしていたのか考えることができた」と振り返る。
新選組の島田魁(かい)を演じた4年、西野光(ひかる)さんは「今は、いつ死ぬのかという切実さを持たずに生きている。(撮影では)角を曲がると敵が現れるかもしれないという決死の覚悟が必要だった」と話す。
福岡教授は「歴史に名を残す人以外にも、色々なことを感じて生きた人がいるのは現代も同じ」と指摘した上で、「自由にならないことや、信じてよいのかと不安に思うことなど、現代に通じて、刺さるものがあればと思う」と語った。
映画公開日は東京では11月26日、京都や大阪では12月10日。順次、全国で上映される予定だ。(富永鈴香)
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