平田瑛美
もの作りの各分野で卓越した技能を持つ人を国が表彰する「現代の名工」に、奈良県から日本料理人で「天平倶楽部」(奈良市今小路町)総料理長の河村正英さん(58)が選ばれた。「他にない五感で楽しめる料理を作りたい」と県産食材を使った新たな料理を探求し続けている。
大分県津久見市で、和菓子屋の長男として生まれた。皮の厚みが均一になるようにまんじゅうを包む父の手さばきが、最初にあこがれたもの作りだった。
高校を卒業後、大阪市の料亭に弟子入り。作業の手伝いをする「追い回し」から始まった修業生活は「技術を見て覚えるよりも盗む」。当時20人ほどいたスタッフは、誰もがより重要な調理を任せてもらおうと競争心むき出しだった。
「不器用なら努力するしかない。人にないことをするしかない」。朝早く魚屋に赴いて魚をさばいた。ぬか床に漬けたばかりの大根を取り出し、隠れてかつらむきの練習をした。できることが増えると、新しいことに興味が湧いて料理に夢中になった。
5年余り勤めた後、大阪府の割烹(かっぽう)や三重県のホテルに移り、日本料理を担当した。1992年に天平倶楽部の料理人になると、数年してメニューを考案する総料理長を継いだ。
奈良で地元の人から「奈良にうまいものなし」と聞くと、修業生活で育った負けん気に火がついた。天平倶楽部では地産地消を大切にし、柿や大和野菜、葛など多くの県産食材を使った料理を提供している。メニュー開発のヒントになると思い、食材の生産地に自ら赴くことも多い。
総料理長の傍ら、奈良調理短期大学校(奈良市西木辻町)の講師を務める。奈良県日本調理技能士会の副会長でもあり、講習会などで後進の育成にも取り組んでいる。料理人向けだけでなく、地元紙で一般家庭へも惜しみなくレシピを公開してきた。「県内でいろんな人が地元食材を使えば、消費量が増えて、県内の農業や飲食業が元気になる」
最近では大和茶を粉状にして豆腐に混ぜた「大和茶豆腐」を作ったり、うどんに葛を混ぜてもっちりとさせた「葛うどん」を開発したり、他にないメニューを探し続けている。「人にできないことをしてみようで、きっとどんな技術も伸びます」(平田瑛美)
からの記事と詳細 ( 「現代の名工」に選ばれた天平倶楽部総料理長 河村正英さん - 朝日新聞デジタル )
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