「参りました」のもとの言葉「参る」には、「墓に参る」のほかにも「行く・来る」の謙譲語としての意味もあります。ビジネスシーンで耳にすることも多いのではないでしょうか。
この記事では「参りました」という言葉の意味についてご紹介していきます。間違いやすい敬語についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
「参りました」の3つの意味
「参りました」は、動詞「参る」の活用形の中の連用形「参り」に、丁寧語の「ます」の過去形「ました」が組み合わさった言葉です。
「参る」には神仏や墓を参拝するという意味がありますが、そのほかにも大きく分けて3つの意味を含んでいます。
ここでは「参る」という言葉をもとに見ていきましょう。
1.行く・来るの謙譲語
「参る」は「行く・来る」の謙譲語で、相手(聞き手)に対して謙遜の気持ちを込めて使います。例えば取引先の担当者に「明日朝8時に参ります」と伝えたり、ホームのアナウンスで乗客に向けて「電車が参りますのでご注意ください」と呼び掛けたり。日常のあらゆるシーンに登場する言葉です。
「参りました」は「参る」の丁寧語の過去形で、「状況が気になり、参りました」「今日ここへ参りましたのは、ご挨拶したいと思ったからです」などのように使います。
なお「伺う」も「参る」と同じく謙譲語で、「訪問する」ことをへりくだって伝えるときに使います。
・課長のお宅に参ります。→〇
・課長のお宅に伺います。→〇
2.負ける・降参する
「参る」には「負ける・降参する」の意味もあります。「どうだ、参ったか」という決まり文句もありますね。「参りました」は「あの人の仕事の速さには参りました」などと使います。将棋で自分の負けを認める「投了(とうりょう)」でも、「参りました」と相手に伝えて降参を示します。
3.困る・閉口する・よわる
「参る」には、「困る・閉口する・よわる」といった意味もあります。体調面や精神面の状態が悪いときに「この暑さには参るな」などと表現します。また、異性などに心を奪われた様子を「あいつは彼女に参っている」などと言うことがあります。
「参る」の成り立ち
「参る」はもともと、「まいる」に「入る(いる)」がついた「まいいる」という言葉でした。それが後に変化して「まいる」になったとされています。
「まいいる」は、神社などの高貴な場所や貴人の前に「参上する・上る・参入する」という意味で使われていました。
「参りました」を使うときの注意点
「参りました」をビジネスシーンで使うのは、上記の「1.行く・来るの謙譲語」の意味であることが多いはず。以下の注意点を確認しましょう。
「参りました」は謙譲語
「参る」は自分の「行く・来る」という行為に対する謙譲語です。相手に対して謙遜の気持ちを表明するものであり、上司や取引先に対して「明日、そちらへ参ります」などと使います。
目上の人の行動には使わない、が基本
例えば部長に対して「明日は部長が参られますか」という表現は合っているでしょうか、間違っているでしょうか。
正解は「間違い」。「参る」は謙譲語のため、目上の人の行動に対しては使いません。正しくは「明日は部長がいらっしゃいますか」です。
ただし、取引先に対して「うちの部長が行きます」と伝える場合は別です。部長は社内の人間、すなわち身内。顧客に謙遜の気持ちを表す意味で「明日、弊社の部長が参ります」となります。敬語の間違えやすい点なので、しっかりとマスターしましょう。
目上の人に対しては「いらっしゃいました」
「参る」が謙譲語なのに対し、「いらっしゃる」は尊敬語。取引先や上司、客に対しては「いらっしゃる」を使いましょう。
以下、簡単に例文を紹介します。
「参りました」を使う場面
・〇〇から参りました、佐藤と申します。
・課長の遠藤がそちらへ参ります。(取引先や顧客などに対しての発言)
・送迎車が参りました。(目上の人や上司、社長に対しての発言)
「いらっしゃいました」を使う場面
・先ほど、〇〇社の田中様がいらっしゃいました。
・お客様がいらっしゃいました。
・こちらにいらっしゃる際はご連絡いただけると幸いです。
「参りました」は丁寧語としても使われる
「参る」は「行く・来る」の謙譲語だと前述しました。しかし「参る」は丁寧語として使うこともあります。
例えば目上の人に対して使う言葉が謙譲語ですが、ただ「行く・来る」という行為だけを述べたいとき。「先週末は熱海に行きました」を丁寧に伝えたいときは「先週末は熱海に参りました」となります。熱海は敬意を払う相手ではないため、このときの「参りました」は丁寧語だということになります。
・先週末は熱海に参りました。→〇
・先週末は熱海に伺いました。→×
・明日から旅行に参ります。→〇
・明日から旅行に伺います。→×
「参りました」の例文
「参りました」の意味を確認してきたところで、意味ごとに例文をいくつか紹介します。
行く・来る
自分や身内、事物(車など)の動作をへりくだるときに使います。
・〇〇大学から参りました樋口と申します。よろしくお願いいたします。
・上司が参りますので、もう少々お待ちください。(客に対して)
・部長、タクシーが参りました。
負ける・降参する
自分の負けを認めて降参するときに使います。
・販売員の巧みな話術に参って、テレビを購入した。
・見事なプレゼンだね、参りました。
困る・閉口する・よわる
困る・閉口する・よわるときの使い方紹介します。
・今年の異常な暑さには、私も妻も参りましたね。
・先月起きた銀行のシステム障害には参りましたよ。二度と起こらないようにしてもらいたいものです。
「参りました」の類語・言い換え
「参りました」の類語・言い換え表現を見ていきましょう。「参る」をどの意味で捉えるかによって異なります。
伺いました
「参る」を「行く・来る」という意味で捉えた場合の類語は「伺う」です。「伺いました」は「参りました」の類語となります。
脱帽しました
「参る」を「負ける・降参する」という意味で捉えた場合です。「脱帽」は「相手に敬意を払う、感服する」という意味があります。
困惑しました
「参る」を「困る・閉口する・よわる」という意味で捉えた場合は、そのままの意味の「困惑する」に置き換えられます。
「参りました」の英語表現
「参りました」は直訳できる英語表現はありませんが、以下の例文を参考にしてみてください。
- Chief Endo will be over there. Please wait a little longer.(課長の遠藤がそちらへ参ります。もう少々お待ちください)
- I'm impressed with your abilities. I will follow your instructions from now on.(あなたの能力には参りました。今後はあなたの指示に従います)
- We've had a lot of heavy rain this summer.(今夏の豪雨の多さには参りましたよ)
「参りました」の使い方をマスターしよう
「参りました」のもとの言葉である「参る」には、「墓を参る」のほかに「行く・来る」「負ける・降参する」「困る・閉口する・よわる」などの意味があります。なかでもビジネスシーンで頻繁に使うのは「行く・来る」の意味においてでしょう。
部長に対して「部長が参りました」とするのは間違いですが、取引先に対して「部長が参りました」とするのは正しい用法。敬語を間違いなく使って、ビジネスマナーをしっかり身に付けましょう。
文化庁「第四話「間違いやすい敬語(1)~尊敬語 VS 謙譲語I」理解度チェックの解答」
からの記事と詳細 ( 「参りました」の意味とは? 間違いやすい敬語や英語表現などをご紹介 - マイナビニュース )
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