この記事を書き始めた今日のお昼過ぎ、ニュースフィードに「アルビル市郊外の家屋に爆弾を搭載したドローンが爆発」というニュースが流れてきました。
場所は私が住むアルビル市から北東に数キロ行った所にある2ヵ所の村で、爆弾を積んだ小型のドローン数機が家屋に衝突し爆発。家屋に損傷はありましたが幸い怪我人はいませんでした。この村は米国が新しい領事館を建設中の場所に近く、執筆時現在で犯行声明などは出されていませんが、イラン系の民兵組織が米国に対して挑発する目的で行ったと見られています。
アルビルにある米国領事館も声明を発表。「イラクの主権を侵害する攻撃を非難」すると述べ、暗にイラン側の関与を非難しました。
度重なるドローンを使った自爆攻撃
イラクで米軍を含む多国籍軍の基地が攻撃をされるというニュースは、2020年1月に起きた米軍によるイランのソレイマニ司令官殺害事件以降、耳にしない月はないと言っていいほど頻繁に起きています。
先日の記事にも書きましたが、ここアルビルでも今年に入って2月に一度ロケット弾攻撃が国際空港内にある対ISISの多国籍軍に対して行われ市内で死者を出しています。米軍は地対空迎撃ミサイル(パトリオットミサイル)を昨年基地内に配備しており、イラク国内にある自国の権益守る姿勢を強めていました。
しかしここ数ヵ月で、この米-イランの対立に端を発したイラク国内の派閥対立に「ドローン兵器」という新たな兵器が登場するようになり、イラク国内の治安を脅かす事態になっています。
事実、先日の記事の通り今年の4月には初めてドローンによる自爆攻撃がアルビル国際空港内の多国籍軍に対して行われ、防衛システムが作動せずに米情報機関の入る建物に対して損害を与えています。
その後も、ドローンを使った散発的な攻撃はイラク各地で起きています。
今月(2021年6月)だけでも首都バグダードで数件のドローンを使った攻撃が起きており、10日未明には米軍基地キャンプ・ビクトリーに対してドローンを使った自爆攻撃事件も起き、16日にはイラク軍の特殊部隊が何者かの爆発物を搭載したドローン2機を撃墜するという事件がありました。
イラクのニュースを見ていても、その登場頻度の変化からここ数ヵ月でドローン爆弾攻撃がロケット弾攻撃に取って代わっていることが分かります。
ドローン爆弾兵器の危険性
ドローンを使った自爆攻撃は、攻撃側にとっては様々な利点があります。
まずはその安さです。ドローンは小さい市販のものであれば数万円で購入可能であり、それに爆発物を取り付ければ簡単に遠隔操作爆弾が完成してしまいます。
また持ち運びが容易な点もあげられます。以前のロケット弾攻撃のように大掛かりな発射台は必要なく、操縦者は比較的小さな荷物で移動が可能で、安全な距離から攻撃を仕掛けることができます。
そしてこのドローン自爆攻撃が最も効果をあげる理由は、現状のミサイルやロケット弾を想定している防衛システムでは容易に通過されてしまうということです。ドローンは低空で接近できることから探知が難しく、そのためイラクに駐留している多国籍軍に対して直接的な被害を与えています。
ドローン攻撃は今後もイラクをはじめ、小さい武装勢力が政府などの軍事力に圧倒的な差のある相手に対して、ゲリラ的な攻撃のために使用することが増えるのは間違いないでしょう。確かにドローン爆弾は被害も小さいために、戦況を動かす効果的な兵器とは言えません。よくて基地内にある武器庫や車両に被害を与えるくらいでしょう。しかし今後のドローン自体の技術発展によれば、その効果も変わる可能性があります。
事実、2017年にイラク軍が北部の都市モスルを過激派組織ISISから奪還する作戦を行っていた最中、ISIS側がグレネードを付けたドローンで奇襲攻撃を仕掛けイラク軍の進軍に影響を与えたこともありました。
現在も泥沼の戦闘が続くイエメンでも、軍事力では劣るフーシ派がサウジアラビアの施設に対してドローン爆弾攻撃を仕掛け、空軍基地や石油精製所に対して被害を与えています。
また先月5月のイスラエルのガザ侵攻でも、ガザのハマス側がロケット弾以外にもドローンを使った同様の自爆攻撃を行っており、「カミカゼ・ドローン」などとも呼ばれました。
米国とイランの対立は、イラク国内の諸勢力を巻きこみ、さらにドローン爆弾という新たな兵器の登場でさらに予測のできない事態になる可能性があります。10月に予定されている総選挙を前に、大きな混乱が起きないことを祈ります。
からの記事と詳細 ( イラク国内の米-イラン対立、ドローン兵器の登場で新たな局面に - Newsweekjapan )
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