Sunday, June 27, 2021

ソニーミュージックが「海賊版配信サイトのブロック命令」を無料のDNSリゾルバに対して勝ち取る - GIGAZINE


ドイツのレコード会社であるソニー・ミュージックエンタテインメント・ジャーマニーが、無料のDNSリゾルバである「Quad9」との裁判で、「海賊版配信サイトへのアクセスをブロック」する裁判所命令を勝ち取りました。Quad9はこの差止命令がさまざまな範囲に悪影響を与えるとして、上訴する構えを見せています。

Quad9 and Sony Music: German Injunction Status | Quad9
https://quad9.net/news/blog/quad9-and-sony-music-german-injunction-status/

Sony Wins Pirate Site Blocking Order Against DNS-Resolver Quad9 TorrentFreak
https://torrentfreak.com/sony-wins-pirate-site-blocking-order-against-dns-resolver-quad9-210621/


DNSリゾルバとは、ユーザーがドメイン名で指定したウェブサイトにアクセスするため、DNSサーバに照会してIPアドレスを割り出すソフトウェアのこと。Quad9はスイスを拠点とする非営利法人・Quad9 Foundationが運営するDNSリゾルバであり、デフォルトのISPまたは商用DNS構成を置き換えて使用することができます。Quad9には「リストに登録された悪意のあるウェブサイトをブロックする」という機能が備わっており、マルウェア・フィッシング詐欺・スパイウェア・ボットネットなどの脅威からコンピューターを守るとのこと。

一見すると海賊版コンテンツとは関係なさそうに見えるQuad9ですが、ドイツにおいてはQuad9などのDNSリゾルバが「海賊版サイトへアクサスする抜け道」になっていることが指摘されています。


ドイツでは2021年3月、大手インターネットサービスプロバイダ(ISP)と著作権者らが協力して「CUII」という独立機関を設立し、オンラインの著作権侵害を防ぐ取り組みを始めました。この取り組みは、CUIIが海賊版を配信していると疑われるウェブサイトを審査し、海賊版配信サイトだと認定された場合、ISPによって当該サイトへのアクセスが遮断されるという仕組みです。

ところが、この取り組みに参加していないDNSリゾルバでは海賊版配信サイトへのアクセスを遮断していないため、DNSリゾルバをQuad9などに切り替えることで規制を回避できてしまいます。そこでソニー・ミュージックエンタテインメント・ジャーマニーはQuad9に対し、海賊版の音楽ファイルを配信するウェブサイトをブロックするように求める裁判を起こしました。ソニー・ミュージックエンターテインメント・ジャーマニーは「Quad9がすでに悪意あるドメインをブロックしている」と主張したとのこと。

そして6月18日、裁判所はソニー・ミュージックエンタテインメント・ジャーマニーの訴えを認め、Quad9に対して海賊版配信サイトへのアクセスをブロックするよう指示する差止命令を出しました。もしQuad9が差止命令に従わなかった場合、海賊版配信サイトへのDNSクエリごとに25万ユーロ(約3300万円)の罰金または2年間の懲役が科される可能性があるそうです。


Quad9は裁判所の命令に対し、「Quad9は申し立てられた著作権侵害の当事者とは何の関係もありません」と公式サイト上で反論し、Quad9はあくまでDNSリゾルバとしての役割を果たしているだけだと主張。著作権者は侵害に対して自らの作品を保護する権利があるものの、当事者と関係がないサードパーティーのDNSリゾルバにもアクセスのブロックを義務づけることは、「危険な前例」になるとしています。

「この差止命令の主張は本質的に、特定の当事者またはメカニズムに対するアクセスを拒否することが技術的に可能な場合、コストまたは成功の可能性に関係なく、オンデマンドでブロックを行うことが法律で義務づけられるということです。この先例が当てはまる場合、ウイルス対策ソフトウェア、ウェブブラウザ、OS、ITネットワーク管理者、DNSサービスの運営者など、当事者から離れた関与していないサードパーティーにも、同様の差止命令が下される可能性があります」とQuad9は述べ、著作権侵害に対する姿勢とは関係なく、DNSリゾルバなどのサードパーティに著作権侵害の責任を問うことは危険だと訴えました。

また、Quad9 Foundationのゼネラルマネージャーであるジョン・トッド氏は海外メディアのTorrentFreakに対し、「私たちの支援者はソニーをさらに豊かにするためではなく、サイバー脅威から一般市民を保護するために私たちを支援しています」とコメント。非営利財団の限られたリソースが、ソニーなどの営利企業にメリットをもたらすために使われるべきではないとの見解を示しています。

そのため、Quad9は今回の差止命令に対して上訴し、異議を申し立てる姿勢を見せています。6月18日に裁判所命令が下された直後の週末、Quad9の支援用PayPalアカウントにはこれまでの900%に上る支援金が集まったとのこと。「私たちのユーザーコミュニティが脅威を理解し、戦うために結集していることは明らかです。寄付に感謝します」とQuad9は述べました。

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