Monday, August 31, 2020

伊藤忠のファミマTOB成立、王者セブンに勝つ術はあるか - ITmedia

 伊藤忠商事がファミリーマートに対して実施した株式公開買い付け(TOB)が成立した。伊藤忠はファミマの完全子会社化と上場廃止に向けて手続きを進めることになる。

 今回のTOBでファミマは伊藤忠の100%子会社にさらに近づき、ローソンも三菱商事との一体化が進んでいる。大手3社の中でセブン-イレブンだけが商社との明確な資本関係を持っていないが、競合2社の動きに対してセブンはどう対応するのだろうか。

photo ほぼ完全な伊藤忠との一体化を果たしたファミリーマート(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

コンビニと商社、一体化

 伊藤忠は1998年、西友から株式を取得してファミマをグループ会社化し、2018年にはTOBを実施して連結子会社化するなどファミマへの関与を強めてきた。ファミマの社長を務める澤田貴司氏はプロ経営者として同社の舵(かじ)取りを行っているが、もともとは伊藤忠出身である。

 三菱商事は01年にダイエーからローソン株の譲渡を受けて同社の筆頭株主になった。その後、17年にローソンに対するTOBを完了し子会社化した。三菱商事の子会社になったことに加え、ローソンのトップは基本的に三菱商事から派遣されているので、市場ではローソンと三菱商事は一体の関係と見なされている。

 コンビニ大手3社のうち2社は総合商社の一部門ということになるわけだが、全く異なる路線を歩んでいるのが、業界トップのセブン-イレブンである。セブン-イレブンを運営するセブン&アイ・ホールディングスは三井物産との資本関係はあるが、三井物産が影響力を行使できる状況ではなく、商社とは中立のスタンスを貫いている。

 意外に思うかもしれないが、もともとセブン&アイ・ホールディングスは伊藤忠との関係が強かった。その理由は、セブンが日本で初めてコンビニ事業を立ち上げるにあたり伊藤忠が全面的に支援したからである。だが、伊藤忠がファミマへの関与を強めたことからセブン側が反発し、その後は一定の距離を置く関係になった。

 競合2社の商社との一体化路線に対するセブン側の戦略は、おそらく「何もしない」ということになるだろう。その理由は、小売店にとっての生命線の1つである「商品の自由度」を下げたくないからである。

セブンが「何もしない」であろう事情

 商社がコンビニとの一体化を進めるのは、どちらかと言うと商社側の都合によるところが大きい。コンビニを子会社にすれば、決算書上、コンビニが計上する利益を自社に取り込むことができる。また、自社が扱う商品を傘下のコンビニに卸しやすくなる。

photo 伊藤忠商事によるファミリーマートTOB完了のリリース(公式サイトより引用)

 これまでファミリーマートで扱っていた無印良品がローソンで販売されるようになったのは典型的なケースといってよい。無印良品を製造する良品計画はもともとセゾングループに属する企業で、ファミマとの関係が強かった。だがファミマが伊藤忠の子会社となり、一方、良品計画は三菱商事と資本関係を持った。結果として無印良品はファミマではなくローソンで売られるようになった。

 商社が持ってくる商品が、コンビニにとってベストなものであれば問題ないが、必ずしもそうとは限らない。商社と一体化するということは、商社のネットワークをフル活用できるメリットがある反面、系列商社以外の商品を扱いにくくなるというデメリットもある。こうした部分がもっとも顕著にあらわれるのが弁当などの総菜類である。

 加工食品は各社でそれほど大きな違いは生じないが、チェーンの特色がもっとも反映されるのは総菜類である。本来であれば、総菜を提供する企業に徹底的に競争させ、最も顧客ニーズに合ったものを調達することが小売店にとってベストな選択である。だが、仮に総菜類の調達先がある程度、資本関係で決まっているのだとすると、顧客本位の選択ができるとは限らなくなる。

 セブンは競合2社として比較して商品力が強いとされているが、その理由の1つは、どの商社とも中立の関係であることが大きい。セブンとしては今、確保しているアドバンテージを維持すればよいので、わざわざ商品の自由度を下げるという選択肢はあり得ないだろう。

 では、競合2社は商品力でセブンに追い付く術はないのだろうか。

デジタル化による変革を

 現状が維持された場合、セブンに追い付くのは至難の業だが、唯一可能性があるとするとデジタル化によるビジネスモデルの変化だろう。

 伊藤忠は、フィンテック(金融とITの融合)を活用した、国内向けの新しい金融サービス事業を検討しているといわれる。近年、急速に普及が進んでいる決済アプリとの連動性を高め、コンビニの顧客をアプリで囲い込み、ここに各種サービスを提供する流れが構築できると、コンビニという業態は根本的に変化することになる。三菱商事も同様の方策を検討している可能性がある。

 業態の変化が生じる時は、シェアも大きく変わる可能性があるので、競合2社としては、このタイミングに賭けるというのがもっとも合理的だ。

 ちなみにセブンはグループ全体としては海外戦略を強化する方向性を明確にしている。セブンは米国第3位のコンビニ「スピードウェイ」を2.2兆円で買収することを決めた。セブン-イレブンはもともと米国のコンビニであり、米国のセブン-イレブンは日本と同様、トップシェアである。今回のスピードウェイ買収で、米国内でのシェアはさらに高まるだろう。

 米国は先進国としては珍しく、今後、数十年にわたって人口の増加が見込める成長市場である。一方、日本市場は今後、人口減少によって縮小が予想されており、国内コンビニ事業がジリ貧になるのはほぼ確実である。セブンとしては国内トップの座を維持しつつ、海外展開を強化することで企業としての成長を維持する戦略だ。

 これまでコンビニは突出した成長産業だったが、国内市場は完全に飽和しており、そうであるがゆえに商社との一体化や海外展開が進んでいる。今回の一連の出来事は、コンビニという事業が一つの区切りを迎えたことの象徴といってよいだろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。


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