Tuesday, April 28, 2020

コロナ危機は現代ネットワーク型社会の怪物だ - 東洋経済オンライン

戦争もインフレ経済も思想もウイルスと同じ

コロナ危機により、これからわれわれが経験するかもしれない局面とは?(写真:pumpyvector/PIXTA)

いまコロナ危機により、世界はさらに不安定化を増している。「現代を代表する最高の知性」と言われるイギリスの歴史学者、ニーアル・ファーガソン氏は昨年12月に行ったインタビューのなかでグローバル課題の2つめにパンデミックを挙げ「明日にも起こる。100年前より速く広まる」と指摘。また同月に上梓した大作『スクエア・アンド・タワー』(上: ネットワークが創り変えた世界下:権力と革命 500年の興亡史)ではパンデミックとその底に横たわる人間のネットワーク性の連関を読み解き、これからわれわれが経験するかもしれない局面まで予見している。本書から一部を抜粋・編集してお届けする。

遍在するネットワーク

自然界は、物理学者のジェフリー・ウェストの言葉を借りると、人間の循環系からアリ塚まで、「最適化され、空間を埋める、分岐したネットワーク」からできており、面食らうほどそれが徹底しているという。

それらのネットワークはみな、巨視的な供給源と微視的な利用場所との間に、驚異的な27桁の大きさの範囲にわたって、エネルギーと物質を行き渡らせるように進化した。動物の循環系、呼吸系、腎臓系、神経系は、すべて自然のネットワークであり、植物の脈管系や、細胞内の微小管とミトコンドリアのネットワークも同様だ。

現代の生物学によって、線虫の神経系から食物連鎖(あるいは「食物網」)まで、地球上の生命のあらゆるレベルでネットワークが見つかっている。

ゲノムの塩基配列決定のおかげで、「ノード(節点)が遺伝子であり、リンクが反応の連鎖である」ような「遺伝子の調整ネットワーク」の存在が明らかになった。河川の三角州もネットワークで、学校で使う地図帳にはそれが描かれている。腫瘍もネットワークを形成する。

感染症が広がる速さは、病気の毒性自体だけでなく、病原体にさらされた人々のネットワーク構造にもおおいに関係があり、20年前にジョージア州ロックデイル郡のティーンエイジャーの間で発生した病気の流行が、それを雄弁に物語っている。

接続性の高いハブがいくつかあると、病気は最初はゆっくり広まった後、指数関数的に広がっていく。別の言い方をすると、「基本再生産数」(感染した典型的な人から新たに感染する人数)が1を超えると病気は流行し、1を下回ると終息する傾向にある。

だが基本再生産数は、その病気固有の感染力だけではなく、感染するネットワークの構造にも左右される。ネットワークの構造で、病気が診断される速さと精度も決まりうる。

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